Fromモーニングピッチ

大企業発の技術系ベンチャーが相次いで誕生 知財が後押し (1/2ページ)

児山欣典
児山欣典

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は大企業発の技術系ベンチャーです。

2020年に6社が誕生

 野村総合研究所の調査によると国内の大学発技術ベンチャーは2000社以上ありますが、大企業発技術ベンチャーは100社未満で相対的に少ない状況にあります。

 しかし、日本のユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の7社のうち、5社はPreferredNetworksやTBMといった研究開発を起点とした技術系ベンチャーで、拡大の余地は大きいといえるでしょう。

 実際、大企業発技術系ベンチャーは年を追うごとに増加しており2020年だけで6社が新たに設立されるなど、注目の領域です。

VCなどが積極的に出資

 増加要因のひとつは、事業の種が増えている点です。高い技術を保有している企業の間では、社内ベンチャー制度などを利用して社内から新規事業を生み出す取り組みが相次いでいます。また、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家が積極的に出資しているほか、官公庁や地方自治体の支援が活発な点も大きな要因です。

 東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が大企業発ベンチャーに特化したファンドを組成したのは、その一つの事例です。また、経済産業省は、新規事業に挑戦したい社員が会社を辞職せずに外部からの資金調達を踏まえた起業の支援制度を運用しています。デロイトトーマツグループも企業発技術系ベンチャーをユニコーンに育てるため、今秋に新サービスを開始する予定です。

独立の度合いに応じ4つに分類

 大企業発ベンチャーは独立の度合いに応じて大きく4つに分類されます。スピンアウトは研究開発などに従事している技術者が当該企業から独立して起業するもので、飛び出した企業側も元の企業も、かかわりを持たないケースが一般的です。スピンアウトと同じく企業を辞めて独立するものの、緩い連携を持つ傾向が強いのがスピンオフです。大企業側にとってはコア事業への資源集中が可能になります。

 経営戦略として事業の一部分を切り出し、第三者の評価、投資を含む参画を得るのがカーブアウトです。親会社からの一定の出資など強い支援・連携を受けながら切り出すことが特徴です。親会社が全額出資する形態が100%子会社で、コーポレート機能などは親元企業に依存しながら人材獲得や意思決定、PRは自由度を持たせています。

 今回はスピンアウトとカーブアウトの領域から5社のベンチャーを紹介します。

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