【経済インサイド】ものづくりの技、海洋権益を“防衛” 深海に挑む「江戸っ子1号」 (2/4ページ)

無人海底探査機「江戸っ子1号365」を積んだ船を見送る関係者=2月20日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)
無人海底探査機「江戸っ子1号365」を積んだ船を見送る関係者=2月20日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)【拡大】

  • 無人海底探査機「江戸っ子1号365」が船上クレーンで積まれる=2月19日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)
  • 船に積まれた無人海底探査機「江戸っ子1号365」=2月19日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)
  • 東京と千葉の町工場が共同開発した無人海底探査機「江戸っ子1号365」=2月19日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)

 その際は船上から音波で切り離しのための信号を送信。装置がそれを受信すると、電流で錘(おもり)から切り離され装置が浮上する。浮上後はGPSで装置の位置情報を船に伝え、回収を待つというのが一連の流れだ。

 江戸っ子1号365は東京都と千葉県の中小企業が連携して開発した。ガラス球は特殊ガラス開発製造の岡本硝子(千葉県柏市)、それを覆うプラスチックカバーは真空成形加工を手がけるバキュームモールド工業(東京都墨田区)、錘の切り離し装置は精密試作加工のパール技研(千葉県船橋市)が担当した。

 江戸っ子1号の開発が始まったのはリーマンショックの影響で景気悪化が深刻だった21年5月。大阪府東大阪市の中小企業が共同開発した小型人工衛星「まいど1号」の成功に触発された特殊ゴム開発の杉野ゴム化学工業所(東京都葛飾区)の杉野行雄社長が「大阪が宇宙なら、江戸は深海だ」と、取引先の東京東信用金庫の担当者に話したのがきっかけだ。

 自走式の深海探査機の開発を考えており、試算によると開発費は2億円以上に達した。当初は10社ほどが賛同していたが、景気の悪化で「とてもわれわれには開発できるものではない」と次々と離れていった。そんななか、JAMSTECから「ガラス球によって何度も繰り返し活用できるようにすれば、コストが下げられるのでは」との提案があり、岡本硝子が24年からチームに参画。開発は一気に進んだ。

 深海を30時間撮影

 そして翌年11月に房総半島沖の日本海溝で行われたプロジェクトでは、ハイビジョンカメラによって深海の世界を30時間にわたり撮影することに世界で初めて成功した。

さまざまな改良