働き方

働き方改革、事務作業進む自動化 時短の切り札「大手9割導入」

 残業時間の上限規制などを定めた働き方改革関連法の4月1日の施行から約1カ月。産業界で労働時間短縮の取り組みが進む中、企業でデータ入力など単純な事務作業の自動化が広がっている。その手法はソフトウエアを活用した「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」。大規模な企業では8割超が導入に着手しており、社員がより創造的な業務に時間を割けるとも期待される。需要拡大は自動化サービスを提供する企業にとっても商機で、自治体などへの市場拡大が見込まれている。

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 東京都文京区のオフィスビル。日本生命保険の金融法人契約部のフロアにノートパソコンが置かれた無人のデスクがある。画面にはロボットの女の子を模したキャラクターのイラスト、その脇には「日生ロボ美」の名札が置かれている。

 ロボ美は平成26年から導入が始まったRPAの愛称。かつては社員が手入力していた顧客の住所変更などの作業を自動化している。20~25人分の省力化効果があったといい、“同僚”の女性社員は「残業も以前は珍しくなかったが、ロボ美が来てからはほとんどない」と恩恵を強調する。

 RPAサービスを提供するアビームコンサルティングによると、昨年6月時点でRPA導入に着手していた従業員1千人以上の企業は79%だったが、約半年後には85%に急増。安部慶喜執行役員は「大手企業は9割以上が導入済み」とみる。

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 背景には働き方改革推進の動きがある。事務の自動化は工場などでの生産関連業務と比べて遅れていたが、働き方改革で時短が注目される中、「日々の業務量を削減できる、ほとんど唯一の手段として産業界に普及していった」(大手システム事業者)。矢野経済研究所によると、国内市場規模は29年の178億円から5年間で803億円までの拡大が見込まれる。

 導入コストの低さも普及を後押しする。RPAは文書作成や表計算のソフトのようなソフトウエアとして導入され、大規模なシステム改修がいらないからだ。データ入力など単純な事務作業が減れば「社員が企画立案などの創造的な作業に時間を割ける」(日本生命デジタル推進室の高倉禎専門部長)利点もある。

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 サービスを手がける事業者が企業に続く市場として期待するのは自治体だ。

 国内最大手のNTTデータは直近2年間で約1700~1800社・団体の受注を獲得。今後は行政向けサービスにも本腰を入れていく。デジタルソリューション統括部の中川拓也課長は「中央省庁が昨年ごろから導入を本格化させているほか、新年度に予算を確保した自治体も多い」と市場拡大に期待する。

 また富士通は5自治体での導入を手がけ、約10自治体とも検討中。4月からは松山市と働き方改革を目的とした連携協定を結び、実証実験に取り組む。担当者は「職員減少で、自治体も働き方改革と住民ニーズの多様化に苦慮している」と需要拡大の背景を分析している。(佐久間修志)

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 RPA 「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略。キーボードでの入力やファイルのダウンロード、コピー&ペーストといったパソコン上の定型的な事務作業などをソフトウエアで自動的に行う効率化手法。工場で動いている産業用ロボットの事務版にあたる。大量の単純作業を正確に処理する業務に適しており、自ら判断を下す人工知能(AI)とは区別される。

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