ミラノの創作系男子たち

「脱構築」実践するコンテンポラリー作家 流行のナラティブに目もくれず (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 アレッサンドロ・カラブレーゼはコンテンポラリーアートの作家だ。「食べることは好きだけど、料理は苦手だ。野菜をトントンと切るのはリズムにのって気持ちいいけど、料理をつくるというのはねぇ。どうすれば積極的になれるか、教えて欲しいくらいだ」と語る。

 これはかなり意外な展開で面白い。連載でこれまで紹介してきたクリエイターは、ほとんど例外なく、「料理はクリエイティブだ」と語り、料理をしない人間はクリエイターの風上にも置けないとの勢いで語調を強める。

 しかし、アレッサンドロは「その気になれない。料理を好きだと言える人が羨ましい」と苦笑い。しかも「シェフがクリエイターだとかアーティストだとか持ち上げられることも多いけど、ちょっとなあ」と語尾を濁す。

 アレッサンドロは、こうも語る。

 「デザインはよく分からない。椅子がどうのこうのという議論を聞いていてもピンとこない。建築を勉強したアーティストとしては、これらの2つの真ん中にあるデザインに夢中になれない」

 1984年生まれ。ヴェネツィア建築大学を卒業し、修士で写真を専攻。建築と風景写真からスタートした。卒業後の最初の作品はアオスタ州の国立自然公園を撮ったものだ。現在、美大で教鞭もとる。その人間の言葉だ。

 ぼくも耳をより傾ける。

 彼は、「ありがちなこと」を断固として拒否をする。フォトジェニックなのは彼の世界ではない。インスタグラムも、アーティストとしての自分のショーケースにしようとは思わない。退屈なのは嫌だ。

 皆がこぞって素晴らしいと感嘆するシーンとは異なる風景。それが、彼のアーティストとしての方向である。作品の主語は写真だ。

 1つの試みはこんな具合だ。

 「正統派」のフォトグラファーとして撮影した写真を、一度、ネットにアップロードする。そうするとグーグル画像検索でそれなりの数の類似イメージが出てくる。

 それらの類似イメージをダウンロードして、オリジナルの写真と並べる。そしてそれらの多くを加工しプリント。これをまたスキャンして透明素材に挟み込む。

 写真のあり方を壊すのではなく、脱構築が彼のテーマであるようだ。「オーセンティック」という言葉も、彼は「あちら側」の表現として突き放す。 

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