論風

勉強熱心な日本人 定年後の生活を豊かに (1/2ページ)

 今年4月から生活ががらりと変わった。学長として2期8年の任期を全うしたので、残された時間はライフワークの研究である中国の古典文学、古典語法、特に唐代の詩歌と小説について集大成に取り組んでいる。今は特任教授として授業を行うだけで、会議から解放されたので学長時代の忙しさはなくなり、本業に戻った感じだ。(国学院大学特任教授・赤井益久)

 楽しみは、学長時代に受けた「新釈漢文大系」シリーズに加わる詩人編の中の「韓愈・柳宗元」の執筆。漢詩を代表する詩人13人の作品について、伝統的訓読、現代語への翻訳、語注、解説をするもので、私が担当する第8巻は2023年刊行予定で、本格的に取り組んでいる。われわれ大学教員は職業として研究に取り組んでいるのだろうか、それとも使命として打ち込んでいるのだろうか。在任中は研究室を与えられ、図書館を自由に使えるうえ相談すれば資料を出してくれる。一方、定年後に、それまでの研究を一切絶って隠居生活を送る先輩もいる。したがって大学と離れてしまえば、こうした便宜がなくなる。大学教員の特権であり、メリットを失ってしまうわけだ。

 若いときから好きで研究に没頭してきたので、大学教員を辞めて田舎に引きこもることは考えてもいなかった。2年後に70歳の定年を迎えるが、スパッと辞めるのは難しい。学界に対して貢献する義務があるからだ。いつまでたっても研究は止められそうにない。

 “100年時代”に備える

 このためサラリーマンが定年後、どのように過ごすかは想像できない。とはいえ、定年後どう生きるべきかが問われる。使命を持って生きてきた人は生活のためではなく、生きがいとして社会人生活を送ってきたはずだ。生きがいは、中国語では「生存の価値」という。大学教員は使命と職業意識が相半ばする。一方、サラリーマン生活を送る中で使命を見つけた人は幸せだが、生活のために給与をもらってきた人が定年という区切りをつけて第2の人生に臨むのはなかなか難しい。

 人生100年時代を迎えた。1億総活躍時代ともいわれる。長寿の方が増えても、寝たきりでは不幸だ。健康で長生きが大事で、健康は自分で守るものだ。生きがい、やりがい、社会貢献-。トレーニングジムに行くと、元気な高齢者が多いことを実感する。高齢者がこぞってプールで泳ぎ、ウオーキングで汗を流している。日本の医療費削減のために自らのお金を使って貢献している。「寝たきりはつまらない」と自覚しているのだ。

 人生100年時代に何をするか。中国の毛沢東は「自力更生」を説いた。「自力で生活を立て直せ」というスローガンは今も生きている。生きがいをどう見つけるかが重要になるが、そのためには人生設計を立てて、必要な教育を受けることだ。

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