■にじむ「異世界」への思い入れ
北海道から沖縄まで、プロ野球が開催される球場を中心に315カ所を巡った著者によるルポ。最寄り駅からの風景や球場の仕様、“野球メシ”を詳述。観戦した写真も掲載されるが、試合内容はほぼ素通りする徹底ぶりだ。
雨天中止で2度も入場できなかった長野オリンピックスタジアムや、現存しない川崎球場などの跡地も訪問しており、長年のファンにはたまらない。初観戦した昭和41年の広島市民球場の思い出を「ビールと煙草(たばこ)の匂い。声援と品のないヤジ。テレビで観(み)るのとは違う大人の異世界」と記す。思い入れが深い分だけ筆致も熱くなる。(彩流社、1800円+税)