今日から使えるロジカルシンキング

日本企業が陥りがちな“罠” モレを恐れるあまりダブってはいないか (2/3ページ)

苅野進
苅野進

ダブりに鈍感な日本企業

 この事態における問題点は、「非効率」ということです。「男性」へのプロモーションを考える部署と「若者」へのプロモーションを考える部署が併設されていた場合、「若い男性」へのプロモーションを別の担当者が連携なく対応していることになります。ちなみに筆者の自宅の近所の旅行代理店では「個人旅行」の窓口と「海外旅行」の窓口が別になっていて、それぞれ違ったプランを「オススメ!」として掲示してあります。個人で海外に行く私はいつも迷っています。

 こうした組織のダブりによる非効率に関して、日本企業の文化として非常に寛容というか鈍感です。各自が「考えモレ」を避けることを重視して、少しずつ対象を広げていくことでいつの間にか大きく重なっているということでしょう。そして、重なりに気付いたとしても「どちらが撤退するのか」の議論は後回しになりがちです。

 さらに、横のダブりだけでなく、縦のダブりも非常によく見られます。責任のダブりです。係長も課長も部長も少しずつ責任範囲がダブっています。そうすることであらゆることに対して、連帯責任という状況を発生させ、一人一人の責任を軽くしているという防御策であるといえるでしょう。

 若手のビジネスパーソンにとっては、組織の問題は気付いても、なかなか改善の方法も権限もないものです。また、ダブっていても、非効率という損害は経営者でもない限り鈍感になってしまうものです。

ダブったサービスが受け手のストレスに

 しかし、ビジネスの相手にとっては非常にストレスフルな状況になります。

 たとえば学習塾での例を紹介します。国語という部署と算数という部署があったとします。それぞれ生徒に対して「国語の力」と「算数の力」に対して責任を負っています。しかし、「国語の力」と「算数の力」という分け方はダブりがあります。例えば「文章の論理的な構成を理解する力」といったものです。にもかかわらず、国語の宿題と算数の宿題がそれぞれ課されているとどうでしょうか? 同じ目的の宿題が二重に課せられることになりますね。生徒や受講料を払っている保護者にとっても、非効率なサービスを受けることになってしまいます。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus