経済インサイド

中小企業は戦々恐々 最低賃金1000円なるか (3/3ページ)

 また、最低賃金をめぐる地域間格差をどう縮小していくかも今後の課題だ。30年度は、最も高い東京都(985円)と最も低い鹿児島県(761円)の間で224円の差があった。最高額に対する最低額の割合は77.3%と4年連続で上向いているものの、この10年間は70%台後半を滞留している状況で、劇的な改善には至っていない。

 30年度の全国加重平均である874円を上回っているのは、東京や神奈川、大阪などの7都府県に限られる。最低賃金の高い一部の地域が、全国加重平均を大きく押し上げている構図だ。

 地域間格差が大きいままでは、最低賃金が相対的に低い地方の人口流出につながる懸念があるほか、受け入れ拡大を見込んでいる外国人労働者も最低賃金の高い大都市圏に集中しかねない。厚労省の担当者も「金額の開きに対する問題意識は持っている」と認める。骨太方針では「地域間格差にも配慮しながら」との表現を原案から追加した。

 与党内には、最低賃金の全国一律化を訴える議員も一部にいる。自民党本部で6月18日に開かれた会合では出席議員から、骨太方針に加えられた「地域間格差にも配慮しながら」との表現に関して「少し時間がかかっても全国的に一元化するとの共通認識を持ってほしい」との声が出た。

 政府が最低賃金の引き上げを重視するのは、所得を底上げし、現状で力強さを欠く個人消費を盛り上げるとの期待があるためだ。

 特に今年は、10月に消費税率の10%への引き上げが予定されている。消費税増税が実施される一方で賃金の上昇が不十分であれば、家計にとってはその分だけ逆風が吹く。引き上げペースの加速には中小・零細企業を中心に企業側の反発などが想定される中、最終的にどの程度の引き上げで落着するかが焦点となる。(森田晶宏)

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