ローカリゼーションマップ

直感は経験を踏まえて働く 「審美性」と「意味」の関係について (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 意味とは極めて直感的なところに依存する。カッコイイ、美味しいとその瞬間、論理的に判断するのではない。

 但し、ここには1つ説明を挟まないといけない。

 美的判断は、ある種のトレーニングや習慣の結果としてある。明治のはじめ、日本の人たちは西洋音楽を良いと感じなかったし、欧州の人たちは日本の音楽に魅力を感じなかった。

 だが、お互いに音楽の聴き方に差異があったとしても、西洋音楽に拒否反応を示す日本の人は少ない。欧州の人はそこまで日本の音楽に馴染んでいないので、多くの人は日本の音楽の良し悪しの判断を停止する。

 何を良いとするかというものさしは、ある程度、自分で獲得していくものなのだ。他人から学ぶか独学であるかに関わらず、何らかの学習プロセスは必要である。その経験を踏まえて、「直感が働く」のである。

 つまり美的な判断は、これまでの経験に基づきながらも、判断する瞬間は論理的な道筋ではなく、直感的な判断になる。その結果、審美性に基づいた方向感覚が意味をつくっていく。

 審美性のレベルが上がれば、すなわちこだわりがより強くなれば、さらに深い意味を手にすることができるのだ。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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