働き方

「働き方改革」は誰のためか 企業と従業員にあるギャップ (2/2ページ)

 誰のための改革か

 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少(人手不足)が深刻化し、生活スタイルの多様化も進む中、企業には「従業員の生産性を向上させると同時に、従業員が働きやすい職場をつくる」という難しい課題が突きつけられている。

 こうした状況に対応しようと進められている働き方改革の“象徴”ともいえる残業規制だが、立教大学の中原淳教授(人材マネジメント)は、「残業時間の削減は本来、社員に能力開発の時間を創出することで生産性の向上につなげていくのが目的。だが実際には、業務量が変わらずに労働時間だけ減っているのを『生産性が向上した』とみなし、満足している企業がある」と指摘する。

 中原教授によると、こうした企業は表面上の総労働時間の削減幅を見て「働き方改革が進んでいる」と錯覚し、どのくらい残業を削減したかという「数字達成」が目的化する。業務量はそのままのため、現場の社員は隠れてサービス残業をせざるを得ない状況に陥り、会社に不満を募らせる-という悪循環に陥ってしまう。

 中原教授は、「従業員が納得できない働き方改革を続けていけば、離職率の増加など、企業にとって厳しい結果を招くだろう」と指摘。「残業時間を減らすことだけに注力するのではなく、売り上げや労働時間、(社員の)働きがいなどを複合的に検証しながら進めるのが本当の働き方改革だ」と話した。

働き方改革関連法 労働基準法など8本の改正法で構成。平成30年4月に改正法案が国会に提出され、同年6月に成立した。今年4月からは罰則付きの時間外労働の上限規制(大企業対象)や年次有給休暇の確実な取得(全企業対象)が義務づけられた。

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