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人口減は「希望」脱成長社会への転換 京都大学教授に聞く (1/4ページ)

 日本の人口は10年連続で減少し、1億2477万6364人(今年1月1日現在)となった。社会保障や医療費の膨張、労働者不足などの問題が山積し、なかなか明るい未来予想が描けない時代だ。しかし広井良典・京都大こころの未来研究センター教授は「希望」という言葉で人口減少を語る。拡大や成長を当然としてきた発想から、いまこそ転換すべき時だと説く。

 --人口減少が希望とはどういうことですか

 「江戸時代後半は人口が3000万人ほどで、ほぼ一定していました。ところが明治から急増し、人口増加と経済発展の同時進行が続いてきたのです。急な坂道を駆け上るように相当無理を重ねてきたともいえる。いまだに大都市圏では過労死といったことが起こり、また幸福度の国際比較では概して日本は良好といえない。人口減少社会への移行は、これまでひたすら拡大や成長を追求してきた方向から、真の意味での豊かさを実現していくターニングポイント、あるいは新たな出発の時代ではないかと思うのです」

 「急成長時代に脇に置いてきたものが手掛かりになるでしょう。江戸末期に来日した外国人は、日本人は怠惰だとかのんびりしていると見ていたようです。勤労の習慣がこの国にはないようだなどと書く一方、これほど幸せそうな国民もないといった記述もある。過労死のような働き過ぎは、急坂を上るなかで生まれた弊害ではないでしょうか」

 --西洋に追いつき追い越せでしたからね

 「ところが日本はいつの間にか、非成長社会のフロントランナーになった。国内総生産(GDP)は1990年代半ばから500兆円前後で推移し、人口は10年連続で減少している。人口や経済の拡大期は飛行機が離陸するように自然や伝統、地域社会から離れていった。今は着陸の時代に入ったといえる。別の見方をすれば、離陸の時代に顧みなかったものを取り戻すチャンスだと思うのです」

 「ただ昔に返るのではなく、現代の視点で取り戻せないか。たとえば神社やお寺はコンビニより多い。心のよりどころにもなる寺社を核に人がつながり、金や物がローカルに循環する仕組みができないでしょうか。私はそんな『鎮守の森コミュニティ・プロジェクト』を提唱し、各地で進めています」

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