ブランドウォッチング

ユニクロ柳井氏の革命的ビジョン 日本、世界がやっと追いついた (3/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 「LifeWear magazine」創刊で、さらに進化

 そしてユニクロブランドのさらなる進化を確信させられたのが、元ポパイの編集長をヘッドハンティングし、マガジンスタイルのリッチな無料カタログ「LifeWear magazine」を8/23に創刊したことです。

 ユニクロが標榜する“LifeWear”(*脚注)の世界観やファッション性を具体的なビジュアルや記事で伝えるマガジン、この手法、従来は間違いなく付加価値の高いハイエンドブランドだけに許されていたものだったはずです。この常識さえもユニクロは打ち壊そうとしているようです。

 ブランディング的にも、あまりにもストイックなブランドアイデンティティの徹底は、ともするとちょっと彩のないドライなものになりかねません。そこに、このマガジン、豊かで人間味やあえて生活感を感じさせる写真や記事で、装うことの楽しさを伝えてくれるさすがに素晴らしい仕上がりです。写真や編集のクオリティの高さもさることながら、凝った印刷技法や、紙、ページ数。これを無料で配ることに震撼としない業界関係者はいないはずです。

 LifeWearというブランドポジショニングの強さ

 あらためてユニクロブランディングのすごさを振り返ると、何より“LifeWear”というブランディング活動最上位概念(ポジショニング・ステートメントと言ったりします)のスケール感、先進性と強さにあると思います。この価値観がはっきりしていてブレないからこそ一貫性のある力強いブランディングができるわけです。

 このコンセプトが革新的であればあるほど、マーケティング活動はある意味布教活動とも言えるレベルになりますし、実際にユニクロは服やファッションに対する生活者の価値観自体を変えようとしているように思います。

 今秋にはインドへ進出するなど、さらに世界へ日本発の力強いブランド価値の“布教”を加速させるユニクロに、ますます期待したいと思います。

(※)LifeWearは、あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着です。(LifeWear magazineより)

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ) ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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