社会・その他

「八ッ場ダムは本当に機能するのか」 橋下徹氏が指摘、大豪雨時代の治水行政 (2/3ページ)

 昨年2018年7月の西日本豪雨。愛媛県の西予市の野村ダム、大洲市の鹿野川ダムで緊急放流が行われて下流の肱川流域が氾濫し、5人の死者が出た。

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 緊急放流すれば下流域で河川の氾濫や堤防決壊が生じるかもしれない。しかし緊急放流しなければダム決壊が生じるかもしれない。どちらを選んでも地獄であり、それでもダム決壊を避けるために選ばざるを得ないのが緊急放流だ。

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 ダムは水を貯めるということで、通常は安全・安心を得られる。しかし、限界を超えた時にはリスクが爆発する。

 確かに八ッ場ダムは、今回はしっかりと水を貯めてくれた。ただし、それは八ッ場ダムの本来の力なのか、それとも試験運用をやっていたからというたまたまの偶然だったのか。すなわち通常運用時であれば水を貯めきることができず、やはり緊急放流が必要だったのかの検証が必要になるだろう。八ッ場ダムがあったから助かった! という安易な単純思考ではダメだ。

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 緊急放流の危険をはらむダムよりも河川改修がベター

 このようなことを考えると、治水対策としては、ダムを造るよりも、まずは河川をしっかりと整備して、大豪雨であってもきちんと水が流れる河川にしておくことが大原則となる。川幅を広げたり、川底を深くしたり、堤防を強化したりすることだ。

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 現実には、ダム建設と河川改修とをミックスした治水計画が作られる。ただしその際の河川改修は、担当役人がそこそこ実現できるものに限定され、困難が予想される河川改修は回避されて、その分はダムによる治水に回される。

 そしてこの治水計画においては、必ず「想定雨量」というものが机上において決められ、人が一生に一度経験するような雨に耐えられる計画が立てられているが、それはあくまでも机上の論であって、その想定を超える豪雨が現実に発生している。つまり最近の大豪雨の事態は、治水計画の想定を超えるようなものになっている。

 想定を超える事態においては、リスク爆発の危険がある緊急放流をやらなくてもいい河川改修による治水の方がベターだ。そしてダムによる治水の場合には河川はそのまま放置されることが多いが、河川改修による治水だと水がきちんと流れることを重視するので、想定を超える事態になっても堤防決壊という最悪の事態を避けることができる可能性が高くなる。

 河川の水が堤防を超えても、それが一時的なものであれば(氾濫)、まだ被害は小さく、回復も早い。最悪なのは堤防の決壊だ。決壊してしまうと水がとめどなく街に入ってきてしまう。ゆえに、堤防の決壊という最悪の事態を避けるためには、緊急放流がなく、河川の弱点についてきちんと整備する河川改修による治水の方が相応しい。

 「ダムに頼る治水」の根源的な問題

 ダムに頼る治水の危険はここにある。本来、河川の弱点をきちんと整備しなければならないところ、河川のリスクはダムに貯め込むということで、河川の弱点の整備が軽視されてしまう。

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