働き方

実は「優遇されすぎ」 サラリーマンと個人事業主の“税金格差”問題 (3/3ページ)

 個人事業主の確定申告を簡素にするべきだ

 第二の課題は、個人事業主の税務申告の手間の問題だ。副業・兼業で所得を得ると、確定申告をしなければならないが、手続きには煩雑で手間がかかるため可能な限り簡素にする必要がある。具体的には、ITを活用した所得の正確な把握を基に、簡素な申告制度を構築することである。

 その場合、労務を提供する者(納税者)が、資金・情報の接点ともいうべきプラットフォーマー(ウーバーイーツならUber Japan社)から自らの収入などの情報入手を簡素にすることがポイントになる。

 筆者は、マイナンバーカードを使って開くマイナポータルに収入情報などを集約させ、イータックスと連動させて簡単に申告する制度を提言してきた。具体案は、東京財団政策研究所のホームぺージから、「働き方改革と税・社会保障」を参照してほしい。

 働き方改革は、長時間残業や人手不足の解消だけでなく、余裕時間を活用した子育て・ワークライフバランスの改善、自己学習機会の向上などあらゆる分野に好影響を及ぼし、国経済社会のクリエーティビティー(創造力)の向上にもつながる。税制も社会保障制度も、それを支える形に変えていくことが必要だ。逆に言えば、改革が伴わなければ、働き方改革は、絵に描いた餅になりかねない。

森信 茂樹(もりのぶ・しげき) 東京財団政策研究所研究主幹
 法学博士。中央大学法科大学院 特任教授。1950年広島生まれ、73年京都大学法学部卒業、大蔵省入省。英国駐在大蔵省参事、主税局税制第二課長、総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に06年退官。大阪大学教授、東京大学客員教授、コロンビアロースクール客員研究員などを歴任。ジャパン・タックス・インスティチュート所長。著書に『デジタル経済と税』『税で日本はよみがえる』(以上、日本経済新聞出版社)など

 (東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹)(PRESIDENT Online)

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