働き方

「3年泳がせる」は嘘、副業はいくら以上儲かったら申告が必要なのか (3/3ページ)

 副業をして所得を得た場合、いくら儲かったら申告をすべきなのか。筆者の個人的見解ではあるが、この630,000円という数字が一つの基準になると考えていいのかもしれない。扶養控除の是正は毎年行われる項目であり、最低でもこれくらいの増差所得であれば、1件とカウントするであろうと推測できるからだ。

 税務調査官は私生活でもチェックにぬかりがない

 副業の情報はどのように収集しているのか、一般の方には、興味のあるところだろう。実は、調査官たちは、親もいるし、兄弟もいる。恋愛もするし、結婚して子どもがいたりもする。いうまでもないことだが、職場を離れると、普通に生活しているわけだ。

 が、一方で、調査官魂は染み付いている。筆者が、在職しているときのことだ。今振り替えってみると、自分独自の実績を残したいと思った上層部がいたのだろうと思う。365日、資料を収集せよということで、小さな特製のメモ帳のようなものが全職員に渡されたことがあった。とにかく毎日、情報を集めろと……。たくさん収集したものには金一封は出なかったが、賞状くらい付与されたような記憶もある。

 そんなメモ帳を渡されなくても、調査官たちは、年がら年中、情報を集める癖がついている。情報収集は、SNSなど存在しなかった時代から、連綿と行われているのだ。

 筆者が漫才師のツッコミに注目した理由

 悲しいかな、筆者は、いまだにその習性が抜けきらない。テレビを見ていると、漫才師が高級腕時計をはめているのが目に留まった。ステージに立てられたマイクにかざし気味に腕をあげてツッコミを入れたのは、その腕時計をカメラがとらえることを狙っているようにも見えた。

 「はは~ん、この漫才師は、なかなかいい税理士をつけているな」

 と、思った。

 どういうことか。漫才師の仕事は、漫才をすること。高級腕時計を趣味として購入したのであれば、必要経費にならないが、テレビ出演の際に着用していれば、舞台衣装として経費に算入できるというわけだ。まあ、その真意は明らかではないが……。

 警察は、事件を追うのが仕事だ。事件が起こってから出動する。しかし、経済は毎日動いている。国税の調査官たちは、日々の生活を送りながら、年中無休で情報を収集しているといえるのだ。

 税務調査に行って、「お前ら、警察より嫌いじゃ!」と吐き捨てられてきたのはそういう理由からだろう。

 業務委託は納税も自己責任

 さて、会社員の副業に話をもどしてみよう。副業と一口にいっても、2種類あることをご存じだろうか。それは、雇用契約を結んで仕事をしているのか、そうではないタイプのものかということだ。

 時給いくらということで、雇用契約を結んでいるような副業であれば、年末に、給与所得の源泉徴収票が渡されるはずである。

 注意しないといけないのは、源泉徴収をしていなかったり、源泉徴収で所得税を預かっているのに、源泉徴収票を発行しないという不届きな業者があるということだ。源泉徴収票が渡してもらえない場合は、きちんと請求することが大切だ。本業の源泉徴収票と副業の源泉徴収票を確定申告書の上で合算しさえすえば、申告は完了となる。場合によっては、所得税が還付される場合もあることも知っておくべきだろう。

 面倒なのが、雇用契約ではない副業だ。自分で収入を計算し、必要経費も計算しなければならない。先に書いたブライダルカメラマンは、求人サイトで募集をしている。そこには、業務委託と書かれている場合がある。

 雇用契約の場合は、拘束された時間内に与えられた仕事をすればそれでよい。しかし、業務委託の場合は、その責任も問われることを意味している。

 頑張れば頑張った分だけ稼げるというプラス思考も大切だが、ミスをした場合のリスクを背負わなければならないのだということも理解しておくべきだ。加えてその利益は、自分で計算しなくてはならない。領収書を集めてはみたものの、これは必要経費にいれてもいいのだろうかと考え出すと、どんどん時間がたってしまう。

 副業を始めたことで身体を休める時間がなくなり、家族との団らんの時間がなくなり……ということになってしまうと、本末転倒という結果になりかねない。

 「時は金なり」という言葉がある。お金を得ることだけに時間を使うのか。いやいやそれ以外に、もっと大切なこと、こころを豊かにするために時間を使うのか。

 たかが、副業、されど、副業である。

飯田 真弓(いいだ・まゆみ) 税理士
 元国税調査官。産業カウンセラー。健康経営アドバイザー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生で、26年間国税調査官として税務調査に従事。2008年に退職し、12年日本マインドヘルス協会を設立し代表理事を務める。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむ セーフ?アウト?税務調査』(清文社)がある。

 (税理士 飯田 真弓)(PRESIDENT Online)

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