面倒なビザ手続きなしに言葉も何とかなるとなれば、チャンスさえあれば国外に出ることに抵抗がない。しかも、馴染みのある家族や友人たちに会おうと思えば、気楽に週末に自国に戻れる。悲壮になる理由がないのである(だから、肩肘張らなくてすむ)。
そうは言っても違った国は違った文化だ。
共通性の高い欧州文化のなかにあっても、それぞれの国には異なった習慣や考え方があり、国境を超えれば「ああ、これは違ったか」と思うことがある。だが、既に旅行などで何度も経験した異文化経験だ。住まないと分からないことがあっても、「驚愕する」ことでもないだろう。
実は、ミラノで生まれた息子が今年18歳になったので、イタリアの国籍を取得したいと言っている。両親とも日本人の場合、それなりに敷居が高いが、国籍取得に必要な年数のイタリアでの学校教育は受けてきている。資格上、(表面的には)問題がなさそうだ。
息子はEUの国のパスポートをもっていると仕事ができる範囲が広まり有利だと考えている。100%のイタリア教育環境を与えてきた親として、反対する理由は何もない…と前述の新聞記事を読みながら考えたのだった。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。