ローカリゼーションマップ

「ちょっと別の土地で仕事しよう」 イタリア人は肩肘張らず国境超える (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 面倒なビザ手続きなしに言葉も何とかなるとなれば、チャンスさえあれば国外に出ることに抵抗がない。しかも、馴染みのある家族や友人たちに会おうと思えば、気楽に週末に自国に戻れる。悲壮になる理由がないのである(だから、肩肘張らなくてすむ)。

 そうは言っても違った国は違った文化だ。

 共通性の高い欧州文化のなかにあっても、それぞれの国には異なった習慣や考え方があり、国境を超えれば「ああ、これは違ったか」と思うことがある。だが、既に旅行などで何度も経験した異文化経験だ。住まないと分からないことがあっても、「驚愕する」ことでもないだろう。

 実は、ミラノで生まれた息子が今年18歳になったので、イタリアの国籍を取得したいと言っている。両親とも日本人の場合、それなりに敷居が高いが、国籍取得に必要な年数のイタリアでの学校教育は受けてきている。資格上、(表面的には)問題がなさそうだ。

 息子はEUの国のパスポートをもっていると仕事ができる範囲が広まり有利だと考えている。100%のイタリア教育環境を与えてきた親として、反対する理由は何もない…と前述の新聞記事を読みながら考えたのだった。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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