キャリア

生き延びた100点の軍師と非業の死を遂げた200点の英雄、その違い (3/3ページ)

 ところがナポレオンは、「正規軍なら勝つに決まっている。この軍隊で戦って勝つことに、俺の価値がある」と発奮し、連戦連勝。名声を不動のものとします。

 ナポレオンが一代で欧州を制覇できた主因は、フランス革命の精神「自由・平等・博愛」を掲げ、行く先々で「解放軍」として振る舞ったことです。才能の誇示は嫉妬されるが、一歩引いて「皆のため」という大義名分を掲げれば、逆に協力を得られる。これを実行したことが彼の凄いところでした。当時王制に辟易していた他国の国民も拍手喝采、ナポレオン軍を迎え撃つどころか、進んで受け入れたのです。

 ところが、ナポレオンは皇帝に即位しました。欧州の諸国民は「え? 俺たちのためじゃなくて、自分が偉くなるための戦いだったの?」と失望。欧州中に嫉妬を再発させたことが没落の端緒でした。楽聖ベートーベンが激怒して、自作の交響曲『ボナパルト』の楽譜のタイトルをペンでかき消し、「英雄」に変更したのは有名な話です。

 ナポレオンは嫉妬をぶっちぎって頂点に立ったかに見えましたが、詰めを誤り、最後は流刑地で非業の死を遂げた。一方、賈クは消極的ながら謙虚な振る舞いで天寿をまっとうした。同じ才能の持ち主でも、他人からの嫉妬との向き合い方次第で、これだけ運命が変わるんですね。

神野 正史(じんの・まさふみ) 河合塾世界史講師
 世界史ドットコム主宰。1965年、名古屋市生まれ。立命館大学文学部史学科卒業後、現職。『最強の教訓!世界史』『粛清で読み解く世界史』『世界史劇場』シリーズほか著書多数。

 (河合塾世界史講師 神野 正史 構成=篠原克周)(PRESIDENT Online)

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