今日から使えるロジカルシンキング

顧客を「共犯者」にするコツ 相手の評価に怯えずに決断する方法 (2/2ページ)

苅野進
苅野進
  • あなたの考えるリスクは何ですか?
  • どこを直せばよいとお考えですか?

→「直せば良い案になる」という前提にもどづいた交渉で共犯関係にしてしまう

 ここで聞き手自身の意見がプランに入ると、聞き手は一気に自分の味方になります。聞き手が複数いて、初めてその内容を受け取る人が、リスクについての懸念を口にしたときに、事前に打ち合わせをしておいた人の口から「それについてはさ~」と説明してもらえるような状況を目指します。

 たとえば採用プランの件に当てはめてみましょう。

  • 「どのような不安を感じていますか?」
  •  →相手の不満・不安を引き出す
  • 「◯月×日の時点でプランBを検討しましょう」
  •  →要望を受け入れて変更を議論する

 このような手順を踏むだけで、先方の満足度も当事者意識もかなり高まります。こうすることで、担当者との打ち合わせで作り上げたプランを再度役員や他のメンバーで正式に決める際、先方役員から「~というリスクは?」という疑問が投げかけられたときに、担当者のほうから「その件については…」という説明が入るのが理想です。

 つまり、机上で「決める」作業は全体の半分であり、相手にぶつける段階でやることがまだ半分残っているのです。そういう意味であなたの提案が50点だろうが80点だろうが、成功のためには、聞き手が「残りのリスクに対して対応しよう」という意識を持てるかどうかがポイントです。

 「なにか不安は? 要望は?」というオープンな質問では先方から案が出てこない場合に備え、選択肢を用意しておくことも非常に有効です。

  • 選択肢Aについてのメリットデメリット
  • 選択肢Bについてのメリットデメリット

 これらを提示して選択に参戦してもらうのです。これは、プランの実行段階において意識の統一を図るのに非常に役立つプロセスです。

 1人で決断するデメリット

 1人で決めようとすることは効率的とはいえません。相手を巻き込むことで、より良い決断ができ、その後のリスク対応もしやすくなります。

  • 「完璧」を目指して時間が経ってしまいがち
  • 相手に当事者意識が生まれないまま、決断後のトラブルに対応できない

↓↓↓

プラン決定プロセスに参加してもらうことで相手が「共犯者」になり解決できる!

 何度も言うように「決断」自体が目的ではありません、あくまでプロセスです。「全責任を負う」はカッコいいように聞こえますが、結果が出やすいようなプロセスを選ぶほうが大切です。前回おすすめしたように、みなさんが躊躇する「決断」自体の重みを良い意味で軽くして、他の要素にうまく分散させることがコツです。2回にわたって紹介した工夫や対策により、決断への精神的な不安が軽減できるだけでなく、リスクも軽減できて、良い結果につながることでしょう。

苅野進(かりの・しん)
苅野進(かりの・しん) 子供向けロジカルシンキング指導の専門家
学習塾ロジム代表
経営コンサルタントを経て、小学生から高校生向けに論理的思考力を養成する学習塾ロジムを2004年に設立。探求型のオリジナルワークショップによって「上手に試行錯誤をする」「適切なコミュニケーションで周りを巻き込む」ことで問題を解決できる人材を育成し、指導者養成にも取り組んでいる。著書に「10歳でもわかる問題解決の授業」「考える力とは問題をシンプルにすることである」など。東京大学文学部卒。

【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら

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