働き方

「仕事好きで長時間労働」派が背負う代償 残業を愛する人々が気づかない危険 (2/3ページ)

 長時間労働のリスク

 働く人にとって、長時間労働がもたらす最大のリスクは、心身の健康を害することでしょう。労働時間が心身の疾患にどう影響するかについては、国内外で多くの研究が蓄積されてきました。

 たとえばアメリカでは、週46時間以上の労働を10年以上つづけた人は、心血管疾患の発症リスクが高くなると報告した研究があります。イギリスの公務員を対象とした研究では、週55時間以上の労働に従事した人は、35~40時間労働だった人に比べ、大うつ病や不安障害の発症リスクが高まると報告されています。

 私たちの研究でも、労働時間が週50時間を超えるあたりからメンタルヘルスが顕著に悪化するという傾向が認められました(図表1)。ストレスから「イライラする」「寝つきが悪い」などの自覚があるため、仕事の能率も悪く、生産性は低下していると考えていいでしょう。

 週50時間を超えると危ない

 この研究では、同一個人に4年間にわたって、働き方やメンタルヘルスについて追跡調査したデータを用いています。つまり、業務内容や働き方の違い、ストレス耐性や性格の違いといった個人差に関係なく、週50時間を超えるとメンタルヘルスが悪化する人は多いという結果が得られたのです。

 週50時間未満の場合は、労働時間の長さによるメンタルヘルスの違いが比較的小さいことから、週50時間はメンタルヘルスを健康に保つうえでの参考値になるはずです。

 ところが、同じデータを用いた別の研究で、たいへん興味深い結果が得られました。「仕事の満足度」は、労働時間が週55時間を超えたあたりから上昇するということです(図表2)。この満足度は、残業手当が増えるなどの金銭的な効用ではなく、仕事から得られる達成感、自己効力感、職場で必要とされているという自尊心などを指しています。平たく言えば、週55時間を超える長時間労働は、本人にとっては、仕事が面白く、満足感や達成感が大きいということになります。

 残業で得られる充実感は“認知の歪み”

 2つの研究は同じデータを用いたので、一見すると、矛盾した結果が出たようにも観察できます。

 ■労働時間が週50時間を超えると、メンタルヘルスは損なわれ、長時間労働になるほど悪化していく傾向にある。

 ■労働時間が週55時間を超えると、仕事の満足感は高まる傾向にある。

 この2つが、働く個人のなかで同時に起こるということです。メンタルヘルスは悪化しながらも、気分は高揚している。いわゆる「ワーキング・ハイ」だろうと推察できます。

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