働き方ラボ

転職を迷っている時こそ冷静になれ 私はこうやって会社を辞めてきた (2/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 今回、自らの人生を振り返ってみて、気づいたことは「やめたい!」と思って転職活動をする時期と、具体的に転職を決断する時期は違うということだった。そして、私の場合は「イヤでイヤでしょうがない」というよりは「はい、次!」「もうここにいてはいけない」と思う瞬間に意思決定していることに気づいた。私の転職史を振り返ってみよう。

1997年(23歳) 新卒でリクルート(当時)入社。希望外の営業配属、あまりの過酷な業務にイヤになり、この年の冬、営業中にキオスクで競合の転職情報誌『DODA』を買う。移動中の電車で読むが、望むような内容がなく、「ここにいるしかないのか」と考えるように。

2000年(26歳) 第一期転職モテ期。大学の後輩が取締役をしているベンチャーに誘われる。その企業はその後、上場したが、後輩や当時の経営者もその後、退任。休日出勤中に「そろそろ転職かな」と思い、映画や音楽、ゲームにも強い大手メーカーの求人を発見。驚くべきスピードで内定。しかし、年収が最低で150万下がるのと、面接に行くたびに社内の様子をみてプライドの高そうな社員たちをみて、「合わないや」と思い、入社2ヶ月前に辞退という不義理をする。結局、社内転職。

2003年(29歳) 第二期転職モテ期。この頃、バンダイの社員との交流が始まり、誘われる。一度、行くと言ったが、ちょうど出向先にいたので、もう一度と思い、やっぱり行かないと断る。

2005年(31歳) ちょうど、同期がマネジャーや編集長、副編集長になり始める時期だったが、「わあ、あいつ頑張ったなあ。すごいなあ」と思いつつ、まったく羨ましくないことに気づき、これは会社の辞め時だと考える。そんな頃に体調を崩し、肺に影が見つかり、癌の疑いが。築地のがんセンターで検査を受ける日に、朝の日経でバンダイとナムコの経営統合の話を知る。これだと思い、転職。

2008年(34歳) 体調を崩し、休職。人生を考える。会社の業績も低迷。転職活動をする。人材紹介会社に登録。「年収を200万下げる覚悟が、あなたにはあるのか?」などひどいことを言われるが、これが現実かと反省する。リクルート系人材紹介会社から、リクルート時代の競合企業を紹介される。内定手前までいくが、壁に張ってあった「スピード!スピード!スピード!」というポスターにひき、「自分が転職で手にいれたいのはこれなのか」と悩み辞退。人材紹介会社に叱られ、ひたすら謝る。ちょうど前年には著者デビューをしていた。大きな会社で小さなことをするよりも、小さな会社で大きなことをしたい、著者活動を本格化したいと思い、リクルート時代の先輩の会社に副業OKという条件で拾ってもらう。

2009年(35歳) 書籍でお世話になった出版社から社外取締役に就任しないかという誘いをもらう。結局、断る。勤務先のベンチャーでは部長待遇だったが、そもそも自分は経営者や管理職になりたくないことに気づく。

2012年(38歳) 著者としての仕事が増えるが、自分の限界を感じ、学び直しが必要だと考え、大学院進学を決意。自分ご指名の仕事も増える。大学院との両立は難しいと気付き、退職。

2015年(41歳) 今度はフリーランスとしての限界を感じ、組織に所属したいと考える。現在の大学に新設学部立ち上げに合わせて着任。

 これが私のこれまでの転職歴である。色々なことがあったが、気づいた点がある。

  • 会社がイヤだと思ったときには、結局、転職しない
  • 自分から飛び込むというよりは、誘われることや、自然な変化を大切にする
  • そのとき、何をとるべきかということを考える

 反省点があるとしたら、あまりに次の環境について無知だったことである。この手の記事を書いていてなんだが(いや、そのときの反省からこの分野の物書きになったのだが)、業界・企業研究が不十分なまま、飛び込むことの繰り返しだった。

 フリーランスになったときも「自由になった」「結果、収入が増えた」と一瞬、思ったのだが、自由な時間こそ、次につながるアクションが必要であると学んだし、フリーランスは会社員時代の収入の3倍くらいの売上を目指すべきということに、あとから気づいた。行き当たりばったりだった。

 というわけで、アドバイスがあるとしたならば、「嫌ならやめろ」ではなく「嫌だなと思ったときこそ冷静に」「自分がやめる理由を客観的に説明できることを大切に」ということだ。別に転職しなくても、異動によって環境を変えることだってできる。さらには、人材紹介会社や転職サイトに登録し、様子をみるという「エア転職」もおすすめだ。職場にイヤな人がいても、異動や退職でいなくなることだってある。「こんな会社、やめてやる!」とプロレスラー藤波辰爾風に叫んでいる場合じゃない。春こそ、冷静になろう。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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