働き方

ブラック企業を描く「社畜」マンガが大増刷、ヒットの背景は

 会社に飼い慣らされ、過重な労働にも耐えて働く。そんな「社畜」を題材としたマンガが昨年、次々と出版された。日常生活を描いたものからファンタジーまで内容はさまざまだが、会社員の習性を捉えた描写はリアルそのもの。社畜から脱却していくストーリーも多く、若い世代を中心に共感を集めている。専門家は「現実にマンガと似た状況にある人が多いために生まれた設定だ」とし、ヒットの背景には近年の雇用形態の変化も影響していると分析する。

 「会社員 でぶどり」(産業編集センター)は、残業や休日出勤を強いる職場に文句を言いながらも順応しているニワトリ会社員が、後輩の影響を受けて変わっていく物語。著者の橋本ナオキ(27)さんが会員制交流サイト(SNS)に投稿していたマンガを書籍化したもので、1巻は昨年3月の出版から立て続けに3度の増刷がかかった。今年3月には3巻を発売予定だ。

 読者層は20~30代が圧倒的に多く、「よく分かる」「励まされた」といった感想が寄せられているという。会社員の友人らの話を参考にした橋本さんは「誇張しすぎたかなと思った話まで、想像以上に共感された」と驚く。

 一方、「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」(小学館)は、ブラック企業で働く社畜の主人公が、街にゾンビが出現したことで「今日から会社に行かなくてもいい」と解放され、人生を満喫し始めるという異色のゾンビマンガだ。原作の麻生羽呂さんは「ゾンビの世界よりも嫌な現実生活を送っていそうな人」として、主人公の設定を決めた。

 特に電子書籍が好調で、「社畜」というキーワードに反応して読み始める人も。映像化に向けた問い合わせもあり、麻生さんは「あらゆる人間関係において、他者の希望、期待、評価に左右され、自分の時間を生きていない人が多いということでは」と話す。

 他にも「僕たちはもう帰りたい」(ライツ社)や、「ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話」(KADOKAWA)など、昨年出版された社畜がテーマのマンガは多数。現代文化に詳しい近畿大総合社会学部の岡本健准教授は「現実社会の傾向に、出版業界がビビットに反応している」とみている。

 だがブラックやハラスメントは別として、会社のために粉骨砕身で働くこと自体は、「企業戦士」として美徳ともされた時代もある。「でぶどり」の編集担当者(47)も「会社員はある程度、そういうものだと思っている。世代による考え方の違いを感じる」と苦笑いだ。

 こうしたギャップの背景に、岡本准教授は終身雇用の崩壊があると指摘する。以前は「ギブ・アンド・テークで、会社への帰属を誓えば雇用や給与が保障された」。だが今はリストラも多く、勤めている会社がいつ潰れないともかぎらない。岡本准教授は「テークがないのに、与えてばかりは不公平。そういう考えが顕在化してきたのではないか」と話している。

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