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繁華街に「夜の守り神」 夜間営業の精神科、半身まひの医師が差し出す救いの手 (1/2ページ)

 大阪・ミナミのアメリカ村に、夜間だけ営業している精神科診療所がある。“若者の街”という特徴から来院者の大半は20代の若者が中心。診察するのは、半身まひなどの障害がある精神科の片上徹也医師(35)。自身が大きなハンディキャップを抱えながらも「苦しむ人の笑顔を取り戻したい」と、手を差し伸べてきた。そんな診療所は現在、「夜の守り神」として地域に欠かせない存在になりつつある。

 夜の守り神

 「人と顔を合わせるのが怖い…鏡越しでも苦痛で」

 片上医師の元を訪れた20代の男性の仕事は、美容師だった。接客業が中心の美容師にとっては致命的な悩みだ。「もう仕事を続けられない」。夜9時から始まった約1時間のカウンセリングの間、発症の経緯と一緒に、男性は不安を吐露し続けた。

 外傷や病原菌など、不調の原因をある程度想定して対処する内科・外科と異なり、精神科は原因が不明のケースも多い。男性も「ある日突然、接客するのが怖くなった」と予期せぬ不調に困惑していた。それでも笑顔を絶やさず、効果が期待できる薬や改善方法を提案していく。帰り際、少し希望が持てたのか男性は一言、安心した表情で「先生、ありがとう」。数カ月の定期通院後、男性は、無事職場に復帰したという。

 夜限定のメリット

 片上医師が、アメリカ村の雑居ビルの一角に、夜行性の動物フクロウにあやかり「アウル(フクロウ)クリニック」を開業したのは平成26年7月。

 周囲は若者向けのアパレル店や飲食店、美容関連の店舗のほか、風俗店やラブホテルなどが立ち並ぶ。「人に安易に相談できない悩みを抱えた人が多い地域だと感じた」という。実際に、通院者の年齢は20代後半が中心。職種も会社員のほか、風俗店勤務の女性、シングルマザーの割合も高い。

 夜間開業のメリットを「仕事上、昼間の通院が難しい人や、精神科にかかることに羞恥があり秘密にしたい人の双方が足を運びやすい」とする。開業から5年以上が経過し、早くもカルテ数は5千枚近い。「結果的に大勢の人を助けることにつながったと思う」と振り返る。

 ハンディを覆す

 一方、片上医師自身も体に大きなハンディキャップを抱えている。研修医時代の23年3月、くも膜下出血で倒れ、幸い一命をとりとめた。しかし、左半身のまひと左視界の注意障害という後遺症が残った。歩行は健常者と比較すると遅く、注意障害により視界の左側で見た書類などに見落としが生じやすく、カルテの読み込みにも時間を要する。

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