今日から使えるロジカルシンキング

大人もやりがちな子どものような「つまみ食い」 (1/2ページ)

苅野進
苅野進

 第21回 1歩目に最大限の注意を

 ロジカルシンキングの最初の一歩は「情報を正確に読む」ということです。ある情報を目の前にして、自分にとって都合の良い部分のみをつまみ食いし、都合よくつなぎ合わせて解釈することは、自分以外の人にとっては「納得感がない」、つまり「論理的ではない」と判断されて、受け入れてもらえない行為です。

 「セレクティブリスニング」や「シニカル・オフェンシブリスニング」を避ける技術(第19回)というのは、ロジカルつまり相手が納得しやすいコミュニケーションの大前提なのです。

 子どもが陥りやすい“罠”

 私の運営する学習塾ロジムで実際に遭遇する、子どもの興味深い例をご紹介したいと思います。次の問題は小学1年生向けの問題です。

カラスが4羽います。そこに新たにカラスが8羽飛んできました。さらに3回「カァー」と鳴きました。そうするとカラスが4羽やってきました。いま、カラスは何羽いますか?

 答えは「16」ですが、驚くほど多くの子どもが「19!」と答えるのです。

 「3回鳴いた」を足しているのです。「今は算数の問題だ」「計算をしよう」「問題に出てくる数字はなんだ?」という強い意識が働くようです。数字以外の情報は「いらないもの」と考え、「数字だけが重要」という偏った視点で「セレクティブ」に読んでしまうのです。

 解法ではなく、「問題文自体を正確に読み取る」という段階でつまずくのは幼いからではありません。前回の解説のように、人間の思考にはそういう傾向があるからです。意識しなければ、とくに緊張する場面でその傾向が強く現れるのです。

 次の問題も、学習塾の小学5年生が実際に取り組んだものです。

たかしくんが算数の問題を解いています。

《問題: 1312131213121312…と数字が並んでいます。30番目までの数字をすべて合計すると、いくつになりますか》

たかしくんは次のように解いて答えを出しました。

◆◆◆

「1312」がくりかえしならんでいる。4つで1つのかたまりだから、30番目までにこの4つのかたまりは、30÷4=7あまり2となる。だから、7つある。

1つのかたまりは、1+3+1+2=7なので、これが7つあるということは、合計で7×7=49となる。

しかし、あまりが2あるので、このあまりを足さなければならない。

だから、求める合計は49+2=51となる。

答えは51だ。

◆◆◆

さて、たかしくんの答えは正解でしょうか。

もし間違がっているとしたら、「どこが間違っているのか」「なぜ間違っているのか」「どのようにして解けば正解になるのか」について、たかしくんに説明してあげてください。

 解答欄に書かれる最も多いものはこちらです。

30÷4=7あまり2

7×7=49

49+1+3=53 →答え 53

 この問題は「たかしくんになぜ間違えているかを説明してあげてください」なのですが、「あなたが正しいと思う答えを書きなさい」と自分に都合よく変えてしまうのです。この問題に取り組ませ、解答用紙を回収したあとに、「みなさんが取り組んでいた問題はなんですか?」と質問をすると

 「30番目までの合計を求める!」

 と答える生徒が少なくないのです。問題文全体の中から、自分がとっつきやすい部分だけを抜き出して、それが問題なのだと思い込んでいるのです。

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