高価格帯の時計のマーケットで現在圧倒的に強いと言われているのがロレックスとパテック フィリップです。この2つのブランドの購入者の購入理由として目立つのが「資産として価値がある」というものです。この2つのブランドは、「使用してから売却するときに値崩れしない」という点が「高価格でアピール度が高い」という点に加えて支持されているのです。パテック フィリップの広告では、親と子の両方が写っている写真が使われています。
資産として相続していく対象としてアピールしているのです。ロレックスもパテック フィリップも同価格帯の時計は多く存在しますし、デザインとして突出して好まれている訳ではありません。しかし、「資産価値」という点での支持率は圧倒的です。そして、その支持率が相場を維持するのに役立っているという好循環になっているのです。
「本来なら手を出そうとは思わない価格帯だけれども、そんなに資産価値があるなら買ってみよう」と思ってもらえます。トレードオフがわかりやすい=相場ができ上がっている世界で、対象を広げるにはこのように別の価値基軸を入れることが大事なのです。
チェキに加わった第3の価値
カメラの世界も性能と価格のトレードオフが明確になってしまっています。それぞれが予算にあったものを買うという世界なので、価格競争になってきています。そんななかで、「『安い』けれど『画質』はいまいち」の分野で「残せて楽しめる」という3つめの価値をアピールして大ヒットとなっているのが富士フイルムが発売したインスタントカメラの「チェキ」です。
20年前から存在した製品ですが、スマホカメラが普通になり「印刷された写真」や「加工されていない写真」が珍しくなった今だからこそ、インスタントカメラのもつ価値がアピールポイントとして大きく支持を集めるようになったのです。売上は15年前の100倍にもなったそうです。
第3の価値によって価格設定力をもつ可能性も
トレードオフが存在するマーケットでは相場に合った、限られた層しか買ってくれなくなります。しかし、第3の価値のアピールに成功すれば、他の不具合には目を瞑ってでも買ってくれる層が出現します。そして、価格設定力も持つことができるようになるのです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら