社長を目指す方程式

いま上司が意識すべきコロナ後の変化 「第三のニュー・ノーマル」到来 (1/2ページ)

井上和幸
井上和幸

 《今回の社長を目指す法則・方程式:ロジャー・マクナミー、モハメド・エラリアン「ニュー・ノーマル(新常態)」》

 5月4日、新型コロナウイルスに関する政府の専門家会議が「新しい生活様式」を提言しました。世界的にもウィズ・コロナ、アフター・コロナでのライフスタイルやワークスタイルが話題となっています。これを「ニュー・ノーマル New Normal(新常態)」として語るものも多く見られるようになってきましたが、今回のこれは「3度目の<ニュー・ノーマル(新常態)>」です。過去のニュー・ノーマルは、皆さん、ご記憶にありますでしょうか?

 これまで2度あった「ニュー・ノーマル」

 初めて「ニュー・ノーマル(新常態)」が語られたのは、本格的なネット社会が到来した2000年代初頭のこと。ネットの普及によって、従来の経済論理やビジネスの常識が通用しない、<収穫逓増社会><限界費用ゼロ社会>が現実のものとなったとして、2000年代前半にベンチャーキャピタリストのロジャー・マクナミーが「第一のニュー・ノーマル」を使い出したと言われています。

 確かに私たちはそれまでとは異なるビジネスモデル・収益モデルを基盤とした事業、サービスにあっという間に取り囲まれるようになり、デジタル通信を電気や水、ガスと同じような社会基盤として使い、生活し仕事を行う世の中に生きるようになりました。

 「第二のニュー・ノーマル」は、2008年~2009年に世界を席巻したリーマン・ショック後の経済・社会の在り方、価値観について語られるようになりました。その提唱者とされたのはパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)代表のモハメド・エラリアン氏。強欲とも言われる資本主義の論理、中でも金融資本主義の構造的な問題への痛烈な反省をリーマン・ショックの大きな痛手で世界中の人たちが感じるようになり、それは広くエシカル(倫理的、道徳的)な消費へと向かい、企業活動の社会的責任(CSR、SDGsなど)が問われるようになりました。そして今回、「第三のニュー・ノーマル」は、ウィズ・コロナ、アフター・コロナの世界に対してです。

 「第三のニュー・ノーマル」が意味するものとは

 私見では、今回の「ニュー・ノーマル(新常態)」は、もともとビフォー・コロナに言われていた諸般のことが、新型コロナで加速されたものばかりに見えます。

 2020年4月より導入された受動喫煙防止関連の法令・条例は、新型コロナで重症化する原因の大きな一つが喫煙による肺の劣化であることから、図らずもの社会的な禁煙化と符合しています。電子マネー化、無人店舗化、自動運転の開発は、3密回避=人と人との接触を減らす社会生活の仕組みとなるものの予見でした。オンライン・ミーティング、リモートワークは、企業活動における3密の回避行動と連携。これから電子押印やオンライン研修、各種SaaSの導入や法人向けECも加速するでしょう。

 言い古された話ですが、日本は「黒船」がやってこないと変われないのです。今回は新型コロナという強烈な「黒船」がやってきた訳ですが、実は黒船はいつもそうなのですが、「黒船以前」からその予兆や流れはあるのですよね(ペリー来航前の約100年の間、既に日本には公式・非公式な開国要請を迫る各国からの来航や漂着が相次いでいました)。今回の「黒船以前」の予兆は、先に挙げたキャッシュレス、無人店舗、受動喫煙防止法、X-Tech…など。そうしてみれば、全てが今回の新型コロナ危機への備えだったようにすら思えますね。

 これらの社会的な動きについてはSankeiBiz上でも様々な専門家の方々や記者の方々がご紹介くださっていますので、私がこれ以上あれこれ言うことではないと思います。ここでは私の専門領域である人材関連に絞っての「新常態」をご紹介してみます。

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