働き方ラボ

ウチのオンライン採用は大丈夫か? 学生から試される面接官のコミュ力 (2/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 ■焦りを感じさせる面接官

 内定辞退を避けるために、志望度を何度も聞く面接官がいる。さらには、法的拘束力のない内定承諾書の提出を迫る人事担当者がいる。「この会社、よっぽど採用に困っているのかな?」と学生は不安になってしまう。

 ■肝心なことを教えてくれない人

 説明会や面接で、こちらが知りたいと思っていることに答えてくれない人がいる。学生たちは動画に慣れているので、ここだけのぶっちゃけ話などにも期待してしまうのだが。結果として、ふわふわした、よくわからない話をもとに企業を決めなくてはならなくなる。

 ■一方通行のコミュニケーションをする人

 オンラインものは、没入するためにリアルなコミュニケーションよりも疲れることがよくある。テレワーク疲れの要因の一つはこれだ。リアルな場の会議なら、端の方の席で黙っていても構わないが、オンライン会議は常に最前列にいる気分になるので疲れるという声をよく聞く。これは、大学のオンライン講義もそうだ。ずっと最前列にいて、教員からあてられるかもしれないという緊張感のもと、1日数本の講義を受けなくてはならない。ただでさえ疲れる、このオンラインコミュニケーションで、一方通行のコミュニケーションをされても困るのだ。相手の圧迫感を意識してほしい。


 もっとも、面接において1対1で熱くされると疲れてしまうが、逆に会社説明会などで、淡々と話されても困る。無難な話が続くものもあり、オンライン説明会はつまらないと、学生は失望していることもおさえておきたい。もちろん、オンライン採用が初めてという企業も多いことだろう。また、やりとりを録画・録音されるリスクがあり、突っ込んだ話、込み入った話ができないという問題もある。これにより、就活ハラスメントが抑止されているとも言えるが(これは録画・録音がなくてもNGだが)、学生に対する「ここだけの話」もしにくい。

 新型コロナウイルスショックが直撃しつつも、大手企業を含め、対面での面接にこだわった企業もあった。「こんな時に学生を企業に呼び出すなんて」という批判もあるだろう。ただ、直接会って互いに確かめ合いたい、オフィスを見てもらいたいという意図もある。逆に、オンラインだけで完結するがゆえのミスマッチには気をつけなくてはならない。今年は内定者懇親会や研修も開きにくい。もちろん、これまでのやり方の問題も多々あるのだが、ミスマッチを解消するための創意工夫に企業は取り組まなくてはならない。

 オンライン採用については、新型コロナウイルスショックへの対応が一段落した後も、定着すると見られている。ただ、完全にこちらに切り替わるのではなく、リアルな場での面接との組み合わせになっていくと私は見ている。いずれにせよ、ビジネスパーソンと就活生はオンラインコミュニケーションに関する力を高めなくてはならない。新型コロナウイルスショックの前から、海外とのやりとりなどではオンラインコミュニケーションが活用されていた。面接の場などは、企業も学生から面接されているのだと認識したい。学生が入社先を決めるポイントの一つは、面接官だ。勤務先のオンライン採用は大丈夫か。確認してみよう。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら

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