インパクトのある情報に引きずられてはいないか
「~年に一度の大雨!」という表現は、危機感を持ってもらい、避難を促すためにインパクトを込めたものでしょう。「人を動かす」表現には大げさなものが多いです。しかし、受け手としては、「誤った直感」によって必要以上に恐れたり、必要以上に楽観になったりすることを避ける必要があります。
練習問題です。
人口の1%の人が罹患するある病気について、罹患しているかどうかを陽性か陰性で判定できる検査があるとします。正しく判定できる確率は99%です。あなたが検査で「陽性です。罹患しています」と言われた時、本当にその病気にかかっている確率はどれくらいでしょうか?
「99%の確率で判定できる」が非常にインパクトが強いので、「自分は間違いなく罹患している!」と考えてしまいがちです。
では1000人の人口で考えてみましょう。1%の罹患率なので実際に10人が罹患している(陽性)と考えられます。そして残りの990人はかかっていない(陰性)と考えられます。しかし、この990人に「99%の確率」の検査をすると、1%は間違って判定されます。つまり、990人の1%である9.9人は誤って陽性と判定されてしまうのです。よって陽性だと判定されているのは10人+9.9人の19.9人(約20人)です。「陽性です」と言われた人は約20人ですが、実際に罹患していると考えられるのは10人です。2人に1人は実は陰性なのです。陽性と判定されたあなたが罹患している確率は意外と低いですよね?
確率を正しく扱わないと、直感に振り回される
世界的な投資家ウォーレン・バフェットの有名な言葉に“Be fearful when others are greedy, and greedy when others are fearful.”というものがあります。「他人が貪欲になっている時には慎重に、他人が慎重になっているときには貪欲に」という意味です。確率を理解できていない多くの人は現実とは乖離して貪欲になりすぎたり、慎重になりすぎたりしていることを見抜いた投資哲学です。みなさんも「直感」に振り回されないために「確率の知識」を大事にしてください。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら