ブランドウォッチング

地域産品のサクセスストーリーを描く「今治タオル」 価格競争から一線を画す (2/2ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 独自ブランドを訴求するメーカーも

 東京の青山には、世界的ファッションブランドのブティックやインテリアショップが集積していますが、実は今治産タオルのショップが5軒も出店しています。歴史的なファッションビルフロムファーストには「今治タオル」公式ショップがありますし、徒歩圏内に各ショップを見てまわれます。

 骨董通りの「IKEUCHI ORGANIC」は、今治産のタオルですが、オーガニックコットンを使用した独自ブランドの世界観を打ち出しています。豊富な素材、色、サイズを揃えながら、手に取っただけでも誰もがモノの違いを実感できる品質はさすがです。何より大型の洗濯機が一番目に付く場所に置いてあるのがユニーク。実際に何度もこの洗濯機で洗った状態の製品が置いてあり、実生活の場で使い込んだ状態を知ることができるとのことです。品質への自信の表れに違いありませんが、ブランドの価値を実際に納得してもらうための正攻法、きめの細かい取り組みだと思います。

 「人間が生まれた瞬間から亡くなる瞬間まで身近にあるタオル、毎日使うものだからこそ品質の違いが生む豊かさを紹介したい」「最近では、家で過ごす時間の大事さが意識され、20代など新しい層も買っていかれる」と手ごたえも十分なようです。

 付加価値のもたらす意味を感じさせる「今治タオル」

 海外の成功事例を見れば、1980年代に一世を風靡したアパレル業界での「メイドインイタリア」や、シャンパーニュ地方の発泡酒「シャンパン」など、巨大な成功を収めた地域産品ブランディングは数多くあります。そういう意味では日本での好事例はまだまだ少ないと言わざるを得ません。むしろ、ひっそりとグローバル価格競争に敗退し良い技術や特徴ある産品が付加価値型の競争に挑むことなく消えてしまった例の方が多いのではないでしょうか。

 良いタオルほど、身近に品質の違いがもたらす豊かさを伝えてくれる製品はそうはありません。10円でも安くというデフレマインドの根強い日本ですが、産業界の未来を考える意味でも、作り手の意志やこだわりを込めあえて「ブランド」として打ち出したプロダクトのもたらす価値を文字通り肌で感じさせてくれる「今治タオル」を試してみるのも良いのではないでしょうか。

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ) ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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