社会・その他

課題山積の東京五輪 徹底した放映配信とメディア多様性の進化で乗り切れ

 【1年後に思う】追手門学院大・上林功准教授

 国際オリンピック委員会が4月にまとめた提言の中で、社会的インパクトとして挙げられる公衆衛生とスポーツの関係について触れている。1年後の東京五輪での実践が必須となる。

 スタジアムそのものは都市空間内の他の場所に比べ、コントロールするという意味では公衆衛生の実践に向いている。椅子の位置は決まっているし、動線も決まっていたりする。ただ、エレベーターや階段、トイレなど人が集まらざるを得ない場所のリスク管理に課題がある。さらに、スタジアムへ至るアクセスなどはコントロール不可能ともいえる。一つの可能性として、スタジアム周辺の複数のオープンスペースで観戦するのはどうか。スタジアムという1カ所に人々が集中しようとするからリスクが高まる。オープンスペースの利用はプロスポーツでも有効となっている。もっとも、1年後だと課題は山積であり、現実的ではないかもしれないが…。

 視聴者と双方向で

 こうした検討も含め、延期後の大会ではコロナと共生するスポーツイベントのあり方が新たなレガシー(遺産)として加わると考えたい。これまでのスポーツイベントを抜本から見直すくらいの考えが必要だ。

 中でも、放映配信を通じて全世界の77億人に五輪の模様が届けられてきたインパクトに注目したい。莫大(ばくだい)な放映権料から「お金」の切り口で議論されることが多かったが、五輪、スポーツを伝える手段としてバージョンアップを考えてみてはどうか。双方向の情報で視聴者のアクションをスタジアムに反映させるなど、プロスポーツを中心に行われているコンテンツの共有方法と連携して推し進めるのもよいかもしれない。

 スタンドに機材

 2021年に東京で五輪を開催するには、放送のセオリーを超えるような、アスリートに焦点を当てた放映配信手法の追求や、インターネットとのシナジーを生かした大勢が感動を共有できるマルチ・メディアの多様性を進化させるべきだ。こうした技術を駆使するため、本来は観客が座るスタンドのスペースに機材を持ち込むところまで考えてもよいのではないか。最悪、無観客にしてでも検討する価値はあるし、それが唯一できるタイミングとして今回の東京五輪があるともいえる。そう考えると、現在議論されている五輪の簡素化と、オンライン利用や放映配信手法の先鋭化は非常に相性がいい。五輪を支えているのが放映権料であることを考えても、放映配信に力を入れることは理にかなっている。(聞き手 北川信行)

 【プロフィル】上林功(うえばやし・いさお) 1978(昭和53)年生まれ、神戸市出身。追手門学院大准教授。スポーツファシリティ研究所代表。建築家の仙田満氏に師事し、マツダスタジアムをはじめとしたスポーツ施設の設計や監理を担当してきた。2014年にスポーツファシリティ研究所設立。早稲田大スポーツビジネス研究所招聘研究員、慶応大大学院メディアデザイン研究所リサーチャーなど。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus