ローカリゼーションマップ

どんなビジネスにも異文化理解は欠かせない 連載400回を迎え改めて語る (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 この連載は文化とビジネスをテーマに2012年春からスタートした。今回で400回目になる。そこで、これまでの経緯を少々振りかえり、今の心境を語っておきたい。

 2000年半ば、アイルランドにある電子機器のユーザーインターフェースを専門とする会社のコンサルタントとして、日本の自動車やカーナビの会社とお付き合いするようになった。そこで日本の大企業、特に商品企画やクリエイティブ部門で見られる異文化理解そのものへの無関心が、グローバル市場でビジネスをするうえで足を引っ張っていることに気づいた。

 ローカリゼーションすべきか、あるいはすべきではないか、この判断基準を殆ど持ち合わせていないことが分かったのだ。根底には、違った文化は違った感覚や思考に依っている事実に思い至っていないとの現実があった。たとえ都市や交通のシステムが文化圏によって異なることを知っていても、それがどんな差異を人にもたらすのかを分かろうとしていなかったのだ。

 差異の背景が分からないとユーザーインターフェースにどう反映していけば良いか不明である。だから逆にユニバーサルであるべき仕様に、意図せず日本文化の要素を入れてしまうとの失敗を繰り返すのだった。異文化に理解が欠けるとは、同時に日本文化に無自覚であることも意味する。

 それで各社とのミーティングで色々と話しプロジェクトも行うのだが、どうも根本のところで、彼らの行動の変化に結びつくような気がしない。執筆や講演を自らとりかかろうと決意したのは、こういういきさつからである。

 このテーマで2008年『ヨーロッパの目 日本の目』、2011年『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』と2冊の本を書いた。後者の本を出版した後、引き続きこの問題を追求していく目的で、この連載をスタートした。それが2012年春だったのだ。

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