社会・その他

“産業スパイ”から技術と社員をどう守るべきか 「怖いのは悪意なき漏洩」 (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 大手化学メーカー「積水化学工業」(大阪市)の元社員の男(45)が、スマートフォン関連の技術情報を中国企業に漏洩(ろうえい)したとして不正競争防止法違反容疑で書類送検された事件は、SNSを活用して社員個人に直接触手を伸ばす産業スパイの実態を浮き彫りにした。危機管理に詳しい専門家は「中国企業は巧妙な手口で接触しており、日本の技術者も罪悪感や悪意なく情報を漏洩してしまうケースがある」と危惧する。産業スパイから先端技術や社員を守るために日本企業はどうすべきなのか。

SNSで直接接触…そこに潜む“罠”とは

 「グローバル化が進み、日本企業の社員が海外企業の社員とSNSで情報を交換することも珍しくない。SNSによって個人と直接つながることができる時代になったことで、産業スパイと接触するハードルも下がった」

 こう指摘するのは、日本大危機管理学部の福田充教授(リスク・コミュニケーション)だ。産経新聞の報道によると、元社員が在職当時、中国企業と接点を持つことになったのもSNSだった。ビジネスに特化した「LinkedIn(リンクトイン)」。仕事のスキルなどとともにプロフィールを作成すれば、ビジネスパートナーや企業の採用担当者らとコンタクトが取れる。世界で6億人を超える登録があり、利用者は会社名や役職、学歴などを公開。元社員は自身が導電性微粒子の研究に携わっていることを明らかにしていた。

 企業の海外進出によって優秀な技術者がヘッドハンティングされる機会も増えているが、福田教授は「産業スパイがヘッドハンティングを装って日本の技術者らに近づくことはよくある。金銭で買収し情報を盗むのではなく、スマートに技術を取る巧妙な手口で、誘われた日本人技術者も罪悪感がない」と話す。

 関係者によると、元社員に接触した中国企業は、広東省に本社を置く通信機器部品メーカー「潮州三環グループ」。同社のホームページによると、2000人以上の研究開発者を抱える国内大手という。

 元社員の書類送検容疑は平成30年8月上旬~昨年1月下旬、積水化学の営業秘密にあたる「導電性微粒子」の製造工程に関する電子ファイルや画像などの技術情報を中国企業側の社員にメールで送るなどしたとしている。導電性微粒子とは、スマートフォンのタッチパネルなどに使われる電子材料で、高い技術を有する積水化学が世界トップクラスのシェアを誇っている。

 「情報の対価を受け取っていれば、さすがに犯罪の意識を強く抱くだろうが、情報交換という形なら話してしまう。悪意のない情報漏洩が最も怖い」

 今回の事件はまさに、福田教授が懸念していた事態だった。中国企業側は情報交換の名目で積水化学の技術情報を送るよう求めた。元社員は「積水化学が持っていない技術情報を交換で教えるといわれ、いけないこととは分かっていたが、社内での研究者としての地位が高まると思った」などと供述しているとされる。

 しかし、実際には中国企業から情報提供はなく、積水化学の情報を一方的に取られる形に。情報を漏洩した“代償”は大きく、元社員は懲戒解雇され、大阪府警に書類送検されることになった。

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