ローカリゼーションマップ

石器時代以前にまで遡る 日本経済を支えた「国道16号線」にヒント (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 柳瀬さんは、マイカル本牧の失敗をバブル崩壊によるトレンド変化と本格的な消費のモータリゼーションの波に乗り切れなかったからだと分析している。1990年代、大規模駐車場と低層の広大な面積の商業施設が主役になることを見切れなかったというのだ。しかも、その檜舞台が国道16号線であり、本牧は16号線文化のトレンドリーダーであったはずなのに、である。

 ぼくもマイカル本牧の開店当時の様子を覚えている。一部の地元の人たちの白けたムードを感じ取った。それはそうだろう。「東京はダサい」と言って気取っていられなくなったのだ。ぼくはといえば、1990年からイタリアに住み始めるにあたり、幸か不幸か、横浜に後ろ髪を引かれることもなかった。

 それは同時に、若いが故のモヤモヤを抱えながら、夜中、16号線を車で走る習慣とも縁遠くなる契機でもあった。

 というのも、東京の周り(神奈川・東京の西部・埼玉・千葉)をおよそ360キロに渡って伸びる16号線は日本のサブカルチャー発祥の地であり、その前は日本経済を支えた生糸輸出のルートであったあたりまでは何となく気に留めていたが、それ以上のことを16号線について考えたことはなかった。

 柳瀬さんと会って話をしていると、彼は酒を飲みながら日本の歴史を創った16号線の凄さを石器時代まで、いやもっと何十万年前のプレート活動まで遡って熱弁する。そこから窺い知る世界は、ものすごく面白い。しかし、心のどこかで「ぼくには不要になった16号」という意識があったようだ。上述の彼の新著を読み、改めてそう気づいた。

 ところがどっこい、ぼくの今の関心のど真ん中を本書はついてきた。

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