ミラノの創作系男子たち

ファッション企業で知財トラブルを解決 弁護士ステッラが「煎餅大好き」になったわけ~女子編 (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 今や国際カンフェランスのパネラーとしても登壇する、知財分野では第一線をいく人として評価を受けるに至った。

 一人の優秀な人間が生み出した機能やデザインに関わり、いわば全人格的に立ち向かうことに琴線が触れるようだ。特にファッション産業は高度な技術的素養を要求されない分、目利きとして判断できるスペースが大きいと感じられるところも魅力だ。

 ステッラの人生の推移で面白いのは、語学がかなり鍵となって作用していることだ。中学の時に英語とドイツ語を勉強したことが、高校の米国留学、大学時のドイツ留学につながっている。高校では古典ギリシャ語とラテン語が必須語学だった。大学でも語学を専攻することは一つの候補だったが、文学と一緒の学科しかなかったので、選択肢から外した。語学だけをやりたかったのだ。

 以前トルコ語を1年間、趣味で勉強した。そして2020年、パンデミックでスマートワーキング。何をしているのだろう。

「フランス語はずっとちょっと避けていたところもあるけど、ファッション業界で仕事をしているとパリに出かけることも多いのよね。そこで、とても信頼できる人とも知り合いになったので、出張がなく時間が余計にある分、フランス語をオンラインコースで勉強しているわ」

 仕事で各国を駆け巡り、機内やホテルで寸暇を惜しんで仕事をしていた日々が突如なくなった。休日には今の季節ならドロミテ山脈やオーストリアのチロルでスキーに夢中になっているところだ。それらの時間が語学の勉強時間に振り替えられたのだった。

 

「活動的な日々は大好きだけど、こういう静かで内省的な生活も悪くないわ」とのステッラの言葉は決して負け惜しみではない。常に前進するために注力するタイプなのだ。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。

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