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ポルシェタイカン 内燃機関の王者がいち早くEVスポーツカーをリリースする理由 (1/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 常々「自動車はオペラ」だと考えてきました。

 広告やマーケティングの仕事をしていると、どんな製品やサービスにもそれぞれの市場やターゲットが存在していることを知りますし、各企業がどれだけの叡智と工夫を重ねて新商品や新サービスを世に問うかということに畏敬の念を感じながらサポートしています。そういう意味では、本音としてどんなプロダクト・サービスにも面白みや魅力があると感じていますし、本連載もそんな視点から、様々なテーマを紹介させていただいています。

 ではあるのですが、実は自動車というプロダクトだけには別格の存在感を感じてしまうこともまた正直なところという他ありません。そもそも個人が購入する耐久消費財として最高額ということもさることながら、市場規模の大きさや影響力の大きさが段違いに大きいのです。産業のすそ野が広いという言い方もよくされますが、卑近な例とすれば広告代理店やメディア各社にとっても紛れもなく大得意先です。

 マーケティング視点で見ても、そもそも「移動・走行」という基本的な機能的価値にとどまらず「車内空間」「積載性」など複合的、さらに情緒的価値を言えば「走る喜び」「同乗する楽しさ」「所有する満足」に始まり、それこそ文化性の領域まで深堀できるほどの奥深さを包含している稀有な製品なのです。

 それがゆえ、プロダクト界の総合芸術的な存在として「自動車はオペラ」だと感じるのです。

電気自動車は大きいラジコン自動車のようなものだろうか

 そんな自動車産業に大きな変化の時期が来ています。中国を皮切りにした年限を決めての脱ガソリン自動車宣言、ヨーロッパ、アメリカと各国が先を争うような状況で、ついに菅総理大臣も脱ガソリン車を目指す方針を発表しました。すると即座に日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、「(日本の)自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と異例の反論で危機感をあらわにしました。早くからハイブリッド車を供給し、最近では燃料電池自動車にも本気で取り組むトヨタ自動車トップの発言だけに一聴に値する言葉に違いありません。

 電気自動車(EV)は大きいラジコン自動車のようなものでしょうか。構成部品は、極端に言えば、モーターとバッテリー、ギア、タイヤをシャーシ上で組み合わせれば作れてしまう気がしなくもありません。実際に、日本電産の永守会長兼CEOは、部品点数がガソリンエンジン車に比べて飛躍的に少ないEVの普及を見こして「自動車の値段は5分の1程度になるだろう」と予言しています。

 こうなると、パソコンやスマートフォン、液晶テレビなどで繰り返されてきたコモディティ化した製品市場で日本企業が軒並み退場させられたあの哀しい情景がどうしても浮かんできてしまいます。しかも自動車は今や最終製品としてみれば日本が世界市場で競争力を維持する数少ない最後の砦、心配するなという方が無理な相談です。

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