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ポルシェタイカン 内燃機関の王者がいち早くEVスポーツカーをリリースする理由 (2/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

タイカンの高い完成度に、圧倒的な説得力

 そんな中、ポルシェが100%EVスポーツカー「タイカン」をいち早く日本市場にも投入してきました。ポルシェと言えば、新車開発のベンチマークとして各社が活用するドイツ ニュルブルクリンクで最速ラップタイムを長年保持し、ル・マンをはじめとする数々のレースでも圧倒的な実績を有するガソリンエンジン時代のトップメーカーと言えます。もちろんエンジン開発への評価も高いことを考えれば、内燃機関へのこだわりがないわけがありません、そんなポルシェがなぜいち早くEVを投入してきたのか、一切内燃機関を持たない自動車がどのようなものであるかを知るためにも、実際のタイカンに試乗してみることにしました。

 タイカンのエンジンがないゆえのキャビン前後が低いフォルムは、すでに外観からガソリンエンジン車とは異質な雰囲気が漂います。室内は、ポルシェらしく華美でないものの精緻な作り込み、完成度の高さを隅々まで感じさせるもので、製品としての有無を言わさぬ説得力があります。スタートボタンが、パソコンの電源マークと同じであることにちょっとしたユーモアを感じながら走行を始めると、早速モーター駆動由来の圧倒的な発進トルクの「ワープ」という他ない加速感でこのクルマが従来の自動車と一線を画する何モノかであることを思い知らせてくれます。

 一方で通常走行している範囲では、やはり内燃機関動力車とは別次元の振動・ノイズの少なさが印象的で、装備されていたブルメスターのサラウンドオーディオが800Vシステムの恩恵もあるのでしょうか、運転する楽しさとは別のリスニングルームとしての自動車の楽しみ方を提案してくれもします。確かにEVは、自動運転やコネクテッド、つまりネット接続して音楽やエンターテイメントを楽しむ場、プラットフォームとしても想定されているものですから、エンジンの振動や騒音は無ければ無いに越したことはないに違いありません。

 「ポルシェが追求してきたのはパフォーマンスであって、その手段ではありません」(ポルシェ プロ、佐々木ヨハネス陽一氏)。確かに、やはりポルシェはブランディングが上手い。充電インフラ、走行可能距離やバッテリーの寿命など、まだまだ生活者が半信半疑の段階で、この本気度でタイカンを投入してくること自体が、「先進性」「トップパフォーマンスに妥協しない」というポルシェブランドの存在表明であることを悟らざるを得ません。

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