働き方

「それは私の仕事じゃありません」テレワーク下で起きている"昭和×平成"対立の実態 (1/2ページ)

 コロナ禍でジョブ型人事制度を導入する企業が増え、社員間に分断や軋轢が生じている。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「職務範囲が明確なジョブ型はテレワークと相性がよく、脱年功序列で人件費削減効果もある。一方、『私の仕事の範囲はここまで、それ以上やりません』という社員が増え、賃金制度を巡っては若い社員と40・50代以上の昭和社員の対立など波乱が予想されます」と指摘する--。

 多くの会社内の人間関係がギスギスし始めている理由

 会社に殺伐とした空気が漂い始めている。コロナ禍で働き方が大きく変わったことで、新たな職場の軋轢や分断が続発しているのだ。

 きっかけはテレワークだ。

 難なくテレワークできる人と、したいのにできない人の間での溝は深い。医療・介護サービス会社の人事部長はこう語る。

 「緊急事態宣言の再発令により在宅で仕事ができる人はテレワークを呼びかけているが、現場の社員は出社しなければならない。在宅勤務している管理部門の担当者が現場の責任者に『早く出勤データを送ってくれと』と催促すると、『こっちも忙しいんだ。在宅でのんびりと仕事をしている人にはわからないかもしれないけど』と、嫌みを言われることも多いと聞く。最近は現場の社員とのコミュニケーションにも支障を来している」

 溝は、同じ部署内でもテレワークができる人とできない人との間にもある。建設業の人事部長はこのように嘆く。

 「人事部門では給与業務のスタッフは出勤せざるをえないし、経理部門の一部の担当者は月末の締め日は毎日出勤している。逆にそれ以外のスタッフはほとんど在宅勤務。出社している社員は、最初は『何で私たちだけが出社しないといけないの』という不満の声もあったが、(テレワークができないため)最近は人事異動を申告する社員まで出ている」

 テレワークに関する不公平感はどこの職場にもあるかもしれない。その不満が溜まりに溜まると職場の人間関係も悪化しかねない。

 職場に分断をもたらす火種になる「ジョブ型」人事

 テレワークと並んで職場に分断をもたらす火種になりかねないのが、「ジョブ型」人事制度だ。

 もともとコロナ前の2018年頃から経団連が導入を提唱していたものの、人事担当者の間では現実感に乏しかった。ところが、20年春以降の感染拡大によって一気にブームに火が付いた。

 ジョブ(職務)型は職務範囲と裁量が明確であるため、オフィスと離れて仕事をするテレワークと相性が良く、生産性が上がると思われているからだ。

 実際にジョブ型の導入を検討している企業が増えている。

 リクルートキャリアの調査によると、導入企業は12.3%。従業員5000人以上の企業に限れば19.8%となっている。

 「導入していないが、検討中である」企業が23.5%。これも従業員5000人以上になると28.3%と大企業ほど導入への関心が高い(「ジョブ型雇用に関する人事担当者対象調査」(2020年9月26日~30日)。

 ジョブ型人事で「現行の年功型賃金制度を変えたい」という本音

 導入の理由は、

 「特定領域の人材(デジタル人材など)を雇用するため職種別報酬の導入が必要」(54.3%)

 「新型コロナウイルスの影響により、テレワーク等に対応し業務内容の明確化が必要」(46.3%)

 などがあがっている(複数回答)。

 やはりジョブ型は離れて仕事をするテレワークに向いているというのは理解できる。だが、それに便乗するような形で、デジタル人材など報酬の高い優秀人材を獲得するために現行の年功型賃金制度を変えたいとの意識もあるようだ。

 本来のジョブ型雇用と日本型雇用とは真逆の関係にある。

 本来のジョブ型雇用(欧米型)は、職務内容を明確に定義したジョブディスクリプション(職務記述書)に基づき、職務をこなせる専門スキルを持つ人を採用・任用する。まず、ジョブありきで、そこに人を当てはめる「仕事基準」だ。

 給与も担当する職務(ポスト)ごとに一律に決まるのが基本だ。日本のように人事異動や昇進・昇格の概念がなく、給与を増やすには職務価値の高いポストに必要なスキルを自ら修得することが求められる。

 採用においても新卒・中途に限らず、必要な職務スキルを持つ人をその都度採用する「欠員補充方式」が一般的だ。

 日本型雇用を脱年功賃金にすると給料激減や就活大混乱が起きる

 一方、日本型雇用はどうか。ご存じのように、職業スキルのない学生を「潜在能力」を基準に採用する「新卒一括採用」に始まり、入社後にOJTやジョブローテーションによってさまざまな仕事を経験させて長期にわたって育成する。

 人事異動も頻繁に行われ、配置や昇進・昇格は蓄積された保有能力や適性を評価し、「この人ならこの仕事に向いている」と、人に仕事を当てはめる「人基準」だ。

 給与も、求められる「遂行能力」を等級ごとに定義し、等級に応じて決まる。ノースキルの新人を長期に育成する以上、一律初任給を基本に生活保障給としての定期昇給と、培った能力に見合った「能力給」(職能給とも呼ぶ)が毎年積み上がっていく。

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