つまり、自社の商品やサービス、機能を陳腐化させてくる5つの脅威(5 forces)には常に(比喩的ではなく、本当に毎日)目を光らせなければ数週間から数ヶ月でひっくり返されます。
例えばアマゾンは2020年11月に処方薬の配達Amazon Pharmacyのローンチを発表しました。街から本屋を消しさったように、今度は調剤薬局が狙われたのです。
そして、自社の優位性の観点からPPFを素早く確認・見直しをすることです。PPFは、経営資源を最適に配分することを目的として考えられたフレームワークのひとつです。
横軸に「相対的市場シェア」、縦軸に「市場成長率」をとったマトリクスを用いて、自社の商品や事業を「問題児(problem child)」「花形(star)」「金のなる木(cash cow)」「負け犬(dog)」の4つのカテゴリに分類して分析します。マトリクスをご覧いただくとわかるように、「金の成る木」はすぐに「問題児」へと逆戻りするのです。
日本で最初の(つまりシェア100%)QR決済サービスだったOrigami PayはPayPayなど大型資本の参入であっさりと敗北しました。この分野で求められる優位性は、「技術」+「一気に面を広める資金力」だと当初から言われていました。Origami Payは「技術」の先駆者として優位性を持っていた時点で大手資本と組む戦略を取れなかったことで、一気に「市場成長性が高い分野でシェアが低い」に成り下がってしまったのです。
人間も事業もいつの間にか陳腐化し、優位性は失われる
この考え方は個人にも当てはまります。たとえば学生時代までの「勉強ができる」という優位性は社会人になった時にかなり弱まります。同じように勉強ができる(業界内ライバル)だけでなく、異業種(勉強はできないけれどコミュ力が高い)などとの競争が始まります。また、若い頃に身につけたスキルや業界知識がいつの間にか陳腐化して、成長業界に取り残されている「問題児化」してしまうこともあり得ます。
つねに外部の脅威にアンテナを張り、自分・自社の市場における優位性を意識し、磨いたり増やしたりすることを怠らない―。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、私たち人間は「気がついたら追い込まれていた」というように視野が狭くなったり、「自分は大丈夫」というバイアスがかかったりするものなのです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら