ブランドウォッチング

試練の時を超え スカイマークが「空のユニクロ」になるための条件 (3/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

「空のユニクロ」というポジショニングはアフターコロナでますます求められる

 そんな生活者インサイトの変化と市場環境の変化の中では、創業以来の迷走を経て、現在の経営体制の取締役会長佐山展生氏がメディアなどで訴求する「空のユニクロ」というブランドポジショニングは非常に時節にあったものと思われます。

 実際に、昨年度末には日本生産性本部・サービス生産性協議会の顧客満足調査で、11年連続のスターフライヤーを超え国内航空会社のトップに立ったとのこと。

 アフターコロナに短期での航空需要の回復が見込みにくい中、基本ボーイング737-800単一編成での運用などLCC的合理性を持ちながら、品質面でも大手とそん色ないものを提供しようという路線は市場環境が厳しい時代に大いに受け入れられる余地があると考えます。

 ただし、最近ニュースをにぎわした、副操縦士がコックピットから撮影した写真をSNSへの投稿や、期限切れキットカットの提供など、ショボい事件はいただけません。ホリエモンも、いまさらながらの紙のチケットに苦言のツイートをしていましたが、スマホで完結できる合理性の高いデジタル動線の整備なども先進的なブランドと認知してもらうためには不可欠に違いありません。

 また、こんなご時世であればこそ筆者はヘッドレストが使い捨ての紙の不織紙でないことが気になったりもしました。

 航空業界のユニクロを標榜するのであれば、安かろう悪かろうという言い訳は通用しません。むしろ航空産業のあまりにも定型化されたサービスの期待値を大幅に上回る驚きを期待したくなるというものです。

あまりにも即物的なブランディングが残念

 何より残念なのは、ブランディング面のプレゼンテーションがあまりにも金融学的な即物性を感じさせる部分です。一言で言ってしまえば、既存ブランディングのキャリーオーバー。飛行機を飛ばすこと以外にはお金をかけませんと言えば合理的なようですが、無頓着なことと簡素な表現の中に思いを込めることはまったく違うのではないでしょうか。

 ユニクロや無印良品が、いかに高度なブランディングで生活者にアピールしてきたか、高い価値観があってこそのリーズナブルという評価が成立し得るのではないでしょうか。

・ユニクロ柳井氏の革命的ビジョン 日本、世界がやっと追いついた

・「無印良品」超大型店は一見の価値あり 簡素にして豊潤 衣食住に拡がるMUJIワールド

 ちなみに、LCCの先駆け米サウスウエスト航空は、それこそブランディングの世界で教科書的な存在として名高く、エンターテインメント性あふれるアプローチは依然大いに参考とすべき部分があります。

 空の市場が完全に様変わりするだろうアフターコロナの時代、レガシーキャリアと別軸の魅力的な価値観をぜひ提示する存在となって欲しいと期待します。

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ) ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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