最強のコミュニケーション術

ブレストはキケン? 話し合いで決めることの不都合な真実 (1/3ページ)

藤田尚弓
藤田尚弓

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第26回は「話し合いで決めることのデメリット」がテーマです。新型コロナウイルスの登場で、私たちの働き方や生活のルールが変化しました。オンラインでの仕事が普及し、コミュニケーション不足が問題視されるようになったこともあり、相談しながら決める機会が増えているそうです。みんなで話し合って決めるという姿勢は素晴らしいことですが、そのデメリットについてはあまり知られていません。私たちの判断は他者からの影響によって変わってしまうという特性があります。

 話し合って決めることのデメリット、人の意見を聞くことのメリット、意見を言ってもらえるようにするためのコミュニケーションについて確認しておきましょう。

90%以上の人が「重要な決定は相談して決める」

 皆さんは何かを決めるときに、自分だけで考えるタイプでしょうか。それとも誰かに相談するタイプでしょうか。ちょっとした決断であれば自分だけで決めるという人も、重要な決断をするときには誰かに相談して、不安を解消したいと思うようです。

 研究によると、自分にとって重要な決定をするときに、他者に相談をする人は90%以上(*1)。複数の人に相談して決める場合のメリットやデメリットは知っておいたほうが良さそうです。

 仕事で何かを決めるとき、先輩や上司から情報を得たり、方向性の間違いを指摘してもらったりする人は多いと思います。問題解決をする場合でも、話し合ってアイデアを出し合ったほうが様々な意見が出る、よりよい決定ができると考えている人もいると思います。しかし、みんなで話し合って決めることが最善というわけではないのをご存知でしょうか。

 

みんなで決めることの不都合な真実1:極端な案も通ってしまう

 みんなで話し合った結果、ハイリスクな案が通ってしまったという経験はありませんか。集団で意志決定をすると、個人で意志決定をするときよりもハイリスクハイリターンのものを選びやすくなってしまう現象があります。これは「リスキーシフト」と呼ばれています。

《例》

1人で決定:

「A案は魅力的だけれどリスクが多いからB案にしよう」

みんなで決定:

「多少リスクはあるけれど、みんなも賛成しているし、A案で行こう」

 1人では怖く感じた案も、リスキーな案に賛成する人の意見を聞けば、それほど怖いものではないと考えてしまいがちです。

 大多数がリスキーな案に同意しているように見えれば、「危ないのでは」と思っていても同調したくなります。「みんなで決めたのだから」という気持ちは、決定への責任を軽くしてくれます。

《例》

「ミャンマーへの進出は、魅力だけど、情勢が不安定だとリスクが高すぎるよな。…でも、AさんもBさんも賛成なのか。ここで反対するのもなんだし、自分は考え過ぎなのかも知れない。みんなで決めたんだし、失敗しても自分の責任になるわけでもないよな」

 逆に、みんなで話し合った結果、1人で考えたときよりも、安全で無難過ぎる案が通ってしまうこともあります。この現象は「コーシャス・シフト」と呼ばれています。

《例》

1人で決定:

「多少リスクをとってもC案で行くべきだよな」

みんなで決定:

「確かに少しリスクを甘く見ていたかもしれない。自分も安全なD案に賛成しよう」

 慎重に考えるべきだという意見を理路整然と言える人が複数いる場合、無難過ぎる案にも私たちは同調したくなってしまうのです。特に、リスクをとることを「考慮が足りない」と評価するような職場では、安全な選択に同調する人が増えやすい傾向があります。

 1人で食事をしているときと、人と食事をしているときでは食べ方が変わってしまうように、知らず知らずのうちに受ける他者からの影響があります。みんなで話し合うというのは最善のようですが、他者からの影響を受ける場でもあります。それがプラスに働くことがあるのは皆さんご存知のとおりですが、ネガティブに働くこともあることを知っておきましょう。

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