「ビジネス視点」で読み解く農業

人材サービスを提供する会社が、なぜ農業サイトを作ったのか? “新参者”が考える農業界3つの課題 (2/3ページ)

池本博則
池本博則

■『マイナビ農業』を創り出すまでの考察

 「人材のプロ」としての着眼点で農業を見た時、下記の3つのポイントをまずは問題点として感じました。

1「農業従事者の減少・高齢化」

2「農業経営は新規参入がとても難しい」

3「後継者が育ちにくい」

 まず1点目に感じた大きな問題点は「農業従事者の減少」そして「高齢化」です。これはよくニュースでも取り上げられる問題ですが、本当に深刻な状況です。

 農林水産省の発表によると、2010年の「農業就業人口」は約260万人でした。しかしその後は、毎年10万~50万人ほど減り続け、私が事業参入を検討していた2016年には約200万人を下回るまで減少している状況でした。(※2020年現在では既に136万人ほどに大幅に減少しています)

 2010年の農業就業人口のうち、65歳以上は約160万人で全体の約6割、平均年齢は65.8歳でした。2016年時点では、65歳以上は約118万人で全体の約7割を占め、平均年齢は66.8歳でした。(こちらも2020年現在では68歳に達しています)

 この大幅な減少そして高齢化についての理由は何か? この問題の根本は調べれば調べる程根深く、複雑な要因があげられ、日本特有の地域差も生じているという事を感じました。(※日本で農業をキーワードにビジネスを検討する際「地域差」というのは大切なワードとなります。こちらは次回以降どこかのタイミングで詳しくお話していきたいと考えています)

 様々な要因が考えられますが、最も大きなものとして「儲からない」ということがあげられると思います。近年、運送技術の向上から、海外から輸入されてくる農作物は品質も悪くなく、国産よりも安く手に入ります。そのため、国産の農作物も価格競争に巻き込まれ、思った金額では販売できないことも。農業を取り囲む環境はどんどん厳しくなっています。

 こうした背景もあり、農業従事者の労働環境や収入は決して良いとは言えません。朝早くから夜遅くまで働いて、月収20万円にも満たない農家もいます。もちろん、個人農家として年収数千万円を上げる方もいますが、そうした生産者はごく一部。このような条件の悪さから、農業に従事する若者は減り、平均年齢は高齢化している状況です。

 2点目として「農業経営は新規参入がとても難しい」ということ。その理由の一つに「初期投資が高額なこと」があげられます。

 農業を始めるときには、「農地」や「農具」が欠かせません。最近では空いている土地が増えていると言われていますが、日本は中山間部が多く、生活をしやすい場所に農地を準備することは難しいのです。アクセスのいい場所に農地を準備しようとすると、高額な費用がかかります。トラクターをはじめとした農業用の機械を準備するとなると、中古のもので揃えたとしても100万円以上は必要になります。

 地方自治体が農業を支援するために、新規農業従事者には支援金を配布していますが、必要額をまかなえる金額ではありません。

 さらに「収入を得られるまでに時間がかかる」ことも農業への新規参入を困難にしています。農業を始めても、最初の1年から3年は土作りに注力しますし、その後も農作物ができてからでないと収益は発生しません。

 やっとの思いで農作物を作っても、天候によって想定していた量や質のものが収穫できなかったり、災害などで出荷できなかったりすると、その分収益は下がります。初期費用が高額だが収益が出るまでに時間がかかるという点が、農業経営に新規参入する人の障害になっているのです。

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