フリーランスの進路相談室

混乱を経て格差がひらく? 歴史に学ぶ 2025年に生きるフリーランスの希望 (4/4ページ)

Workship MAGAZINE
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小熊:社会の変化というのは、もっと小さな変化が蓄積しておきるものです。たとえば5年後、職種ごとに横断的なつながりができているといったことはおきるかもしれない。いまでもシステムエンジニアや介護労働者は、企業単位の雇用の安定性がほとんどなくて、同じ職種のまま企業を移動して働くようになっているでしょう。

 フリーランス同士のつながりや、職種ごとのつながりができて、仕事を紹介したり労働組合のような機能を持ったりする未来は、ありえるかもしれません。そういうものが蓄積してくると、法制度はあとからついてくることもあります。

山中:たしかに、この連載でも紹介した「フリーランス協会」や、「NEWS」のようなギルド組織など、フリーランスの相互扶助の取り組みはすでに生まれています。そうした取り組みが増えることは、法律や制度が変わるよりもイメージしやすいですし、現実的ですね。

■フリーランスも、関係のなかで生きていく存在である

山中:では、2025年までに大幅に社会は変わらないなかでフリーランスとして生きていくために、個人のレベルでできることはあるでしょうか。

小熊:単純な話として、人間は太古の昔から、ひとりでは生きていけないということは認識したほうがいいと思います。

山中:人間は、ひとりでは生きていけない。

小熊:ひとりで生きられない部分を、なんらかの社会関係に頼っているわけです。ここまでの話も、ある人は会社における社会関係に頼り、それ以外の人は家族関係や地域関係の中で助け合って生きてきたということです。戦前の日本にも、フリーランスに近い人たちがいた。大企業や官庁勤めでなく生きていた人のほうが、ずっと多かった。しかしその人たちは、別の形で助け合って生きていたんです。

山中:誰もが、何かに頼って生きてきた。ですが「フリーランスは自己責任で、自分で能力を高めていくべきだ」という風潮も、少なからずあると思います。

小熊:能力は必ずおとろえる。病気になることもある。個人が30年、同じ能力を発揮し続ける絶対の保証はできません。ですから、例えば銀行が30年単位でお金を貸す際には、何らかの個人を超えた信用がないと難しいんですよ。

 「今は年間1000万円稼いでます!」と言っても、「30年間もその能力を発揮し続けられるんですか?」と問われたら、わからないでしょう。

 だからその個人を超えたもの、たとえばその人がどんな会社と安定的な雇用関係にあるか、担保として土地を持っているかなどが、融資の保証として求められるんです。「この会社や土地はこの人の能力が衰えても30年後も存在するだろう」という信用が担保になるんですね。

山中:なるほど。結局、人間はなんらかの形で助け合って生きていかざるを得ないんですね。

小熊:市場経済が発達すると、その当たり前のことが見えにくくなります。貨幣を介在することで、他の人の労働に頼っていることが見えなくなりますから。でも、コンビニで買ってきた弁当だって、誰かが作ったものでしょう。

 「自分はフリーランスのエンジニアで、人と関わることが苦手だから、パソコンに向かって仕事だけをしていればいい」という姿勢が成立するのも、さまざまな人が関わり合う巨大なシステムの中の一部として自分が存在しているから。それを忘れちゃいけませんよね。

■私たちは、誰とどういう関係を築くかを問われている

山中:フリーランスのなかには、人と関係を築くことが苦手な方も多い印象があります。

小熊:まあ、フリーランスの方の中でも社会関係資本の格差は生まれるでしょうね。私は地方移住者についてのフィールドワークを本にまとめたこともあるのですが、地方に移住して活躍するのも、人間関係を築くことが得意で大企業でも成功できるような人じゃないとむずかしいと思いました 。フリーランスも同様ではないでしょうか。

山中:社会関係資本の格差……。「関係性の貧困」と呼べるような状態にならないために、なにができるでしょうか。

小熊:自分はどの関係性に重点を置くのか考えて、人との関係を作ることではないでしょうか。「自分は腕は立つれども人間関係は苦手だ」という人こそ、他人に頼っていることを忘れないほうがいいんです。ITやデザインの技術があっても、会社に所属したくない人は、経理部や営業部の支援に頼れない。会社の総務部に頼れないなら、病気になったときに、自分が国の制度や保険組合の知識を持っていなければならない。

 よほど全方位に知識や営業力のある万能人ならともかく、信用のおける友人とか、技術者どうしのネットワークとかが必要です。あるいは家族のサポートに頼れるようにする。

 「やっぱり家族や親戚と付き合ってくべきだ」とか、「同業者とできるだけSNSで交流しよう」とか、 「この仕事の賃金について交渉しなきゃいけないから組合を作ろう」とか、どの関係性に重点を置くか考えて選択することが大切です。

山中:自分をとりまく関係性について自覚的になるということですね。

小熊:それはフリーランスだからというわけではありません。私が一貫して言っているのは、人間という存在は、時代が違ったり職種や働き方が違ったりしても、誰もが人との関係の中で生きている、ということです。その関係のなかで、自分はどれを優先するのかを考えて、選択する。つまり、作りたい関係性に即した生き方があるということです。そのことが分かっていれば、あんまり名称にこだわらなくてもいいでしょう。

山中:「フリーランス」という名称にもこだわる必要がないと。

小熊:そうだと思いますよ。繰り返しになりますが、自分が、誰と、どういう関係性を築いていきたいのか、ということです。

■進路相談室の扉は、みんなに開かれている

 小熊さんが言うように、人間は関係性のなかで生きる存在。それは僕らフリーランスだって同じです。それを、やはりわずらわしいと考えて避けるのか、希望と考えて自ら関係性を築いていくのかは、一人ひとりに委ねられています。

 そして僕は、「2025まで働けますか? フリーランスの進路相談室」の連載で様々な方に進路相談をするなかで、「フリーランスは、ひとりじゃない」という、希望のような気持ちを持ちました。

 この連載は、一旦これでおしまいです。

 ですが、進路相談は誰にでもできること。もしみなさんが、なにかキャリアのことで悩むことがあったら、同じように悩んだことのある人に、思い切って相談してみてはいかがでしょう。

 悩む人と、かつて悩んだ人が話したら、そこが進路相談室。その扉は、誰にだって開かれています。

(執筆:山中康司 撮影、編集、アイキャッチデザイン:Huuuu 提供元:Workship MAGAZINE『混乱を経て格差がひらく? 歴史に学ぶ、2025年に生きるフリーランスの希望』

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これからフリーランスになろうとしている人や、フリーランスになりたての人、フリーランスとしての働き方を見直したい人など、キャリアに迷ったときに何度も読み返せるような一冊です。

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