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就活で「ガクチカ」は必要か? 1度や2度の“武勇伝”よりアピールすべきこと (1/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 就活関連で、ここ数ヶ月話題となっているのが「コロナの影響でガクチカをどうするか」という問題である。何のことを言っているのかわからない人もいることだろう。ガクチカとは「学生時代に力を入れたこと」の略だ。エントリーシート、面接などでよく聞かれる。新型コロナウイルスの影響で2019年までのような、これまでの学生生活が送れない中、アピールできるガクチカがないのではないかという問題だ。

 コロナ禍で“経験値”積みにくい学生

 「ガクチカ」といえば、「学園祭に店を出し焼き鳥を1000本売った」「インカレサークルを立ち上げた」「著名な起業家、ジャーナリストを招いて講演会を開いた」などという「武勇伝」を想像する人もいるだろう。このような体験がなく、何をアピールしていいのかわからないという学生はコロナ前からいた。中には、ガクチカをつくるために夏休み、冬休みに奮闘したり、証拠の写真や動画を残すなど、涙ぐましい努力を続けてきた学生もいる。ただ、学生生活が大きくコロナの影響を受ける中、そもそもアピールできるような体験をすること自体が難しくなっているという声がある。

 新型コロナウイルスショックで、学生生活は大きく変化している。講義も必ずしも対面講義ではなく、オンライン化した。サークル活動も十分に行うことができない。学園祭も中止か、オンライン開催だ。海外旅行も留学も行けない。友達も増えない。ましてや、恋人との出会いもない。アルバイトもシフトを減らされる―。思い描いていた大学生活とは大きく異なる日々が続いている。大学教員として、激しく同情する。

 これは世界的な問題でもある。ILOのレポートでは「ロックダウン世代」という言葉も生まれている。新型コロナウイルスの影響で、教育や就職の機会、収入を失うなどの不利益を受ける可能性のある若い世代のことを指す。

 もちろん、このような環境下で少しでも楽しい日々を送れるよう学生たちも大学教職員も試行錯誤を続けている。オンライン化した学生生活も必ずしも悪くないという声もある。特に講義においてはだ。ただ、このような日々を送っているがゆえに、就活でアピールするポイントがなく「ガクチカ」で何をアピールするか悩んでしまうのだ。

 学生に同情しつつも、この問題は「ガクチカ」というものが大きく誤解されていることに起因していないか。学生も、企業も「ガクチカ」を誤解し、結果として振り回されていないか。

 そもそも「ガクチカ」が大事な理由

 面接ではなぜ、「ガクチカ」を聞くのか? それは、その学生を読み解くためだ。行動特性、思考回路、価値観を読み解くためにする質問の一つである。別に楽しい思い出話、武勇伝を聞く場では必ずしもない。

 ただ、立ち止まって考えたい。このような「ガクチカ」「武勇伝」を語る人は、これをすべてやりきったのだろうか。同じように成功し続けることができるだろうか。実は周りの誰かが貢献していたり、運がいいだけだったり、再現性が低いという場合もある。中には、頑張ったのは仲間なのに、いかにも自分が取り組んだかのように語る人がいる。いわゆる「アレおれ詐欺」である。

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