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会社の“菅義偉部長”を考える 「伝わらない」コミュニケーションが持つリスク (1/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 理解できなかった。菅義偉首相が自民党総裁選に不出馬を表明した3日、首相と官邸で面会した小泉進次郎環境相が、後のぶら下がり取材で涙を流したのだ。「首相が1年間やってきたことが新型コロナウイルスに対する批判一色で染まり、前向きな実績も覆い隠された。1年でこんなに結果を出した首相はいない」と語りつつ、である。

 とにかく「伝える」ことが下手だった菅政権

 なぜ、そこで泣くのか。「こんなに仕事をした」「結果をだした」と言われても、一国民として実感できないのはなぜだろう? まるでマイクアピールで滑ってしまったプロレスラーのように思えた。

 もちろん、あとから振り返ると分からなくはない。小泉氏は、菅首相に不出馬も選択肢だと伝えたとされている。一部では「菅さんでは勝てない」と不安に思った若手議員が小泉氏に進言を依頼したとも言われている。また「こんなに仕事をした」「結果をだした」というのは「脱炭素」など環境関連のことのようだ。自身が支えきれなかったことの未練もあるのかもしれない。

 しかし、菅首相の退陣にしても、小泉氏の涙にしても、国民としては白けてしまう。要するにこれは、「伝わらない」コミュニケーションなのだ。もっと言うと、伝えようともしていないかもしれない。

 菅政権の総括が各メディアで行われている。私は「コミュニケーションに難あり政権」と呼びたい。とにかく、コミュニケーションに問題があった。会見を開かない、質問に答えない、国民に届く言葉で語らない。説明しない政治、人の話をきかない政治。少なくとも、そのような印象を与えてしまったのではないか。

 たしかに、短期間の割には「仕事をした」のかもしれない。デジタル庁、脱炭素、妊活支援など新たな取り組みをした。コロナ対応に対する批判は常にあったものの、ワクチン接種も推進した。東京五輪・パラリンピックも無観客でやりきった。もちろん、道半ばのものもあるし、取り組みに賛否はあったが、冷静に振り返ると取り組んだことがないわけではない。

 ただ、短期間だったとはいえ、菅首相および政権について、よくわからず不信感が渦巻き、最終的に支持率が低迷したのは、これらの取り組みの「伝え方」が下手だったからではないか。

 小泉氏や西村康稔経済再生担当相をはじめ、周りの人々も彼の考えを上手く通訳・翻訳できていなかったのも問題だった。五輪開催について「人類がコロナに打ち勝った証」と言いつつも、振り返れば「Go To」をはじめ逆に感染拡大につながってしまうのではと疑問を持たざるを得ない政策もあった。さらには、自身も含む政治家たちの会食疑惑も、不満の連鎖を生んでしまった。「コミュニケーションに難あり政権」そのものだ。

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