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Paidy売却は布石? ビジネスマンに不可欠な「PayPalマフィア」的着眼点 (1/2ページ)

苅野進
苅野進

 アメリカの決済大手であるPayPal(ペイパル)が、「後払い決済システム」を提供する日本のPaidy(ペイディ)を9月に3000億円で買収するというニュースは大きく報じられました。先進的なIT技術に関するものだと思われがちですが、このニュースを考えることは「新規事業」の基本を確認するのにとても良い教材だと思います。

 そもそもPayPalは「世の中にいろいろな新しいネットショップがあるけど、クレジットカード番号などの重要情報を入力して購入するのはちょっと…」というシンプルな不安に対して、「PayPalにだけ重要情報を預けてくれれば、代わりに支払いをやっておきます」という“安全な仲介”を提供した企業です。シンプルな不安・需要に対して、既存の技術で素早く対応したわけです。

 今回買収されたPaidyはネットショップで買い物した代金の「後払い決済システム」ですが、サービスそのものは昔から存在しましたね。いわゆる「請求書払い」です。Paidyはこの請求書払いを「ネット化」し、「分割支払いも手数料なしで可能」にしただけの企業ということもできます。PayPalもPaidyも「支払い」という全く新しくない行為に対して、付加価値を提供したに過ぎないのです。

大企業が見落としがちな「漏れた人」への訴求

既存のサービスから漏れている顧客はいないか?

 これは、大企業に勤めているようなビジネスマンが軽視しがちな思考です。大企業は「新しい客に、うちのサービスを」と考えがちで、既存サービスが大きければ大きいほど小さなマーケットへの進出には本腰をいれません。それが大きく成長しそうなら参入しようとか買収しようという考えです。

 大企業のビジネスマンは、普段から世間のサービスを十分に享受しやすい立場なので既存のサービスの欠点に気づきにくいと言えます。PaidyのようなBNPL(Buy Now Pay Later=今買って後で支払う)サービスの開発者は、「クレジットカードの審査で落ちた」という経験の持ち主が結構多いのです。勤続年数が短い、スタートアップ勤務、フリーランス、起業家…などを理由に、クレジットカードの与信審査に通らない人々は存在しますよね。

与信審査は、金融機関だけがもつ能力なのか?

Paidyは、

クレジットカードを持っていない人々

 を狙いました。「そんな危険な商売できるのか?」というのがこれまでの考え方です。これまでも企業が「請求書払い」にするには、書類を出したりして「きちんと支払う能力も傾向もある」ことを認めてもらう必要がありました。

 そしてこの「与信審査」の能力こそ金融機関が独占的に持っていると考えられていたのです。しかし、額を抑え、IT技術による情報収集・管理を併用することにより「この金額までだったら大丈夫」という与信管理を、金融機関が対象にしていなかった層を相手に実現したのです。

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