【元受付嬢CEOの視線】すっぴんの受付嬢はあり?なし? 女性はなぜ職場にメイクをしていくのか

2019.5.30 07:05

 みなさん、女性がなぜ職場にメイク(化粧)をしてくるのか、考えたことはありますか? 男性はどう感じているのでしょうか。「毎日大変だな」「いつもどれくらい時間やお金をかけているのだろう」「女性ならではの楽しみだよね」という声がある一方、中には「身だしなみとして当たり前だ」という意見もあるかと思います。

CAがまさかのすっぴん宣言

 最近、イギリスのヴァージン・アトランティック航空が、女性CA(客室乗務員)のメイク義務を廃止したというニュースを耳にしました。「化粧をしたくないスタッフはノーメイクで乗務できる」というわけです。

 このニュースを受けて、航空券予約比較サイト「エアトリ」が、「就業中における女性のメイク」に関する意識調査をおこないました。最も多かったのは「どんな職業でもメイクする・しないは本人の自由」と回答した人だったようですが、「職業によってはメイクすべき」と回答した人も、男性で30%、女性では42%いたそうです。しかも、その「メイクすべき職業」第1位は「受付窓口対応」ということです。

 今回は、かつてその“メイクをすべき職業ナンバー1”の職業に就いていた私の観点で「仕事中のメイク」についてお話しさせて頂きます。

 私自身、社会人になってからもう十数年経っておりますが一度もノーメイク、いわゆる「すっぴん」で出社したことはありません。女性の中には、毎日メイクすることが面倒だと感じながらも続けている人がいるかもしれません。しかし、私自身は、会社に行く際にメイクをするという行為について面倒くさいと思ったことは一度もありません。

会社によって“色”がちがう 受付嬢のメイク

 受付嬢だった時、必ずメイクをきちんとして仕事に就くことが徹底されていました。そして、受付嬢が目立つことを良しとしない会社もある中で、私は比較的“バッチリメイク”を求める会社を選んで働いてきました。私の個性や考え方が活かせるのは、どちらかとえいば受付嬢としての存在を前に押していきたい企業だと考えたからです。

 会社はイメージアップのために受付のスタッフに制服を用意しています。その制服を着用するには、それにふさわしい身支度をすべきで、それで初めて受付嬢としての任務を果たせると思います。メイクも、提供すべき価値や担っている役割に準ずるのだと思います。

 では、そのメイクをめぐる規則が窮屈に感じたかといえば、そうではありません。受付嬢だった当時、自分に足りないものを補ってくれ、良いところを際立たせてくれるのがメイクだったからです。

わたしが毎日メイクをして出社する理由

 転身したいま、“バッチリメイク”の規則はなくなりました。それでも、わたしにとって出社時のメイクはまさに「ルーティン」。朝のウォーミングアップであると当時に、スポーツ選手がおこなう「ルーティン」といえるかもしれません。

 私がメイクにかける時間は15分程度です。毎日メイクをする時間は自分と向き合う時間だと思っています。一日の中で自分に向き合う時間を取ることは意外と難しいものです。肌の調子をみて自分の体調を把握したり、当日のスケジュールを頭で確認しながらアイシャドウの色を選び、自分を「臨戦態勢」に持っていきます。メイクを終えた自分を見て、「よし、今日も一日頑張ろう!」と思えます。

私が“戦う”相手とは?

 仕事にメイクをしていく女性は誰の視線を気にするのでしょうか? 化粧品を販売する「ナガセ ビューティケァ」がおこなった「働く女性の『メイク』に関する意識調査」では、メイクをするときに意識するのは「職場の同僚女性」の目であると答えた女性が最も多かったようです。女性は男性よりも同性である女性の視線を気にする傾向があるようです。

 私はというと、男性の目線・女性の目線、そのどちらでもありません。ただ、その日に接する人々を意識してはいます。社外の方とお会いする時は、好印象を持っていただきたいですし、商談や接客に望む際は真摯な姿勢を理解してもらうためのメイクを心がけます。

 また、社員を率いる人間として、社内の目も意識します。社長という立場だからこそ身なりは一番整えていなくてはならないと思いますし、もっというと憧れられるような存在でいなくてもいけないとも思います。

メイクする時に最も気を使うパーツ

 お客様とお会いする日、メイクの仕上がりでこだわるのは眉毛や肌です。眉毛の形で人に与える印象は大きく変わりますし、眉毛がおかしいとすべてが台無しです。相手に「敬意」を示したいときには、清潔感を出すことがもっとも大切だと思います。そのため、肌がきれいな印象を与えられるようなメイクを心がけます。

 また昼と夜とでもイメージを変えるようにしています。昼は商談がメインなのでメイクは濃すぎず薄すぎず。夜は会食がメインなので、日中より華やかな印象を与えられるよう心がけています。照明の暗さを考慮することもあります。

 アイメイクを濃くするならリップも…というように、ポイントメイクのバランスにも気をつけています。

すっぴんもまた自己表現

 これまでご説明したように、私にとってメイクはルーティンであり、社外・社内の人々への意思表示、そして自分の自信を補ってくれるものです。つまり、メイクは私にとって自己表現方法のひとつです。ですから、メイクが思うようにいかなかったりすると逆にテンションが下がりがちです。

 メイクが就業規則でない限り、すっぴん出社もまたその人の表現だと思います。日本ではメイクが女性の身だしなみのひとつだと考える風潮が強いですが、私自身、弊社の女性社員がノーメイクで出社してきても特別な感情は抱きません。

 マリリン・モンローの名言のひとつに、「笑顔は女の子ができる最高のメイク」という言葉があります。メイクをしていても無愛想や表情が乏しくては意味がない。逆にメイクはしていないけど、笑顔で接してくれる人には好印象を抱く。メイクをしているか、していないかよりも大切なことがあると思います。

男性も「すっぴん」出社、いかがですか

 弊社に古株メンバーのひとりで、イケメンの社員がおります。その彼が、髪もセットせず、いつもはかけていないメガネをかけて出社したことがありました。私はその彼を二度見してしまいました。「あれ? 今日、新入社員の人いたかな!?」と。私が「今日どうしたの!? 雰囲気違うね」と声をかけると、「今日はすっぴんなので…(笑)」と返ってきました! 私以外の全員に同じようなことを言われたそうです。いつもイケメンな彼ですが、その日はイケメンを“お休み”した日でした。

 男性が自身を「すっぴん」と表現するユーモアに社内が和みました。その後もたまに「すっぴん出社」するのですが、コミュニケーションの一環になっているようで、思わぬ効果があったことが印象深かったです。

 「バッチリメイク出社」の日もあれば「すっぴん出社」の日もある。男女問わず、自分を自由に表現できるべきだと思います。

橋本真里子(はしもと・まりこ)

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ディライテッド株式会社代表取締役CEO

1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら

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