回転ずし大手のくら寿司は23日、AI(人工知能)などを使って効率的に餌やりをする「スマート養殖」で育てたハマチの握りずしを24日から全国で期間限定販売すると発表した。効率化によって餌代の高騰などの課題解決にも期待が寄せられる革新的な養殖法。育ったハマチは「大きく、脂の乗りも良い」とアピールする。
同社はAIやIoT(モノのインターネット)などを活用して餌やりを効率化させたスマート養殖を導入している。一度に大量の餌を食べるハマチの習性に合わせ、食いつきの良いタイミングをAIが解析し、自動で餌をまく仕組みを構築。これにより養殖にかかるコストの7割を占める餌代を1割減らせたという。
同社は令和3年4月にマダイでスマート養殖の実証実験を始め、マダイは水揚げ分を4年3月に期間限定で商品化した。ハマチはその第2弾で、3年6月から実証実験を始めて育った約20トン分を今回、ほぼ全店で提供する。販売は26日までの3日間。2貫で220円になる。
これまでの実証実験では、ある程度の大きさに育てた中間魚を使ったが、稚魚から育てればさらに餌のコスト削減が期待できるという。実験開始時に比べても、燃料費の高騰や餌の価格が上がっている。このため広報担当者は「餌の無駄や、省力化が図れるスマート養殖の重要性が高まっている」と強調する。
また、人手不足解消にも一役買うことも期待されている。いけすの様子はスマートフォンなどで世界中どこにいても遠隔モニターできる。これにより基本的には2、3日に一度、給餌機に餌を補充すれば管理できるといい、「省人化を図るだけでなく、養殖業者の働きやすさにつながる」とシステムを開発したウミトロン(東京都品川区)の担当者は話す。
マダイ、ハマチのスマート養殖は実証実験を経て、愛媛県宇和島市で6月から養殖業者に委託する形で本格スタートした。くら寿司は今後、他の魚種にも広げる方針で、令和6年から初出荷し、8年度に年産500トン以上を計画している。