通勤型車両なのに男性用トイレと展望席…京急が新型車両に“凝った”ワケとは

    有料列車「ウィング号」での運行は?

    新型車両は全座席にコンセントが設置されているほか、各車両に防犯カメラも付いている。設備面だけみれば、有料の座席指定列車「モーニング・ウィング号」や「イブニング・ウィング号」での運用を念頭に置いた“豪華”仕様といえるが、「ウィング(号)で使っている2100形より座席定員数が少ないため」(京急)、デビュー後すぐにウィング号の運用に就くことは難しいようだ。

    クロスシートに切り替えられた製作中の自動回転式座席(京浜急行電鉄提供)
    クロスシートに切り替えられた製作中の自動回転式座席(京浜急行電鉄提供)

    現在、ウィング号で使われている2100形は、京急のフラッグシップ。全席クロスシートの2ドアの車両で、日中は特別料金不要の快特や特急の運用もこなす。これに対し、新型車両の1000形は3ドア。ドアが多い分、2100形より座席が少なくなっている。座席指定券は現在、2100形の定員に合わせて発券されているため、2100形のピンチヒッターとしてデビュー直後の登板は難しいのだという。

    ただ、座席の幅は2100形より10ミリ広くなり、京急の車両では最も広い座席に。将来、有料のウィング号の運用に就くことになっても、十分に「乗り得」の車両といえる。

    ちなみに、2100形に今後、トイレが設置される可能性はあるのか。京急は「2100形を改造してトイレを付けるということは考えていないが、利用者のニーズ、(新型車両のトイレの)利用頻度から需要があれば、検討していきたい」としている。

    新型車両で注目したいのが「展望席」の存在。担当者は「運転席の後ろに、運転席の方を向いた座席を復活させました。これを展望席と呼んでいます」と誇らしげだ。2007年に新造された車両から、クロスシートのこの展望席は廃止されていたが、今回の新型車両で復活。2人がけの座席で前面展望が楽しめるようになるという。

    「京急らしさが失われている」

    車両の設備だけでなく、外観にもこだわりが。新型車両はステンレス製。本来は塗装しなくてもよいのだが、銀色のままでは「京急らしさが失われている」(担当者)ということで、あえてイメージカラーの赤と白で塗装。しかも、銀色が見えないように車体全面に塗装を施したという。

    ステンレス製もアルミ製も、鋼製車両に比べ軽量化を図れるという点では共通している。ステンレス製だと塗装の必要がなく、それだけコストを抑えることができるという特徴もある。多くの私鉄やJRでは、銀色のステンレス車体にラインカラーの帯をまとわせている。日本初のステンレス車両、東急5200系に至ってはラインカラーが配されることもなく、まさに銀一色だった。

    コストだけでなく、保守面でも塗装しない方がメリットがあるはず。それでもなお、京急が全塗装を施したのは、「当社のイメージとして銀色よりも、赤と白の方が京急らしさがある」(担当者)からだった。関西で阪急電鉄が「阪急マルーン」と呼ばれるこげ茶色の塗装を続けているように、イメージ戦略の一環でもあるようだ。

    実は、今回の1000形車両(1次車)のデビューは2002年と、20年近く前にさかのぼる。当初はアルミ製だったが、途中からステンレス製になり、車体の一部に赤と白のカラーフィルムを貼り付けた。この銀色時代がしばらく続き、約2年前から全面塗装に回帰したという。

    「(ステンレス車体の)全面にシール(ラッピング)を貼った車両もあるのですが、塗ったほうが早いということで今回の新型車両では塗装になりました」

    京急の沿線住民や京急ファンらからも「京急らしさ」を求める声があったようで、京急も試行錯誤を繰り返してきたことがうかがえる。


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