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【ビブリオエッセー】老いない心でいつまでも 「そしていま、一人になった」吉行和子(集英社)

吉行和子さんといえば多くの映画や舞台、テレビなどで活躍してきた大女優である。私は大好きだった90年代の連続テレビ小説『あぐり』を思い出した。原作のモデルになり、話題になった家族の長女が和子さん。なにより美容師の母、あぐりさんのその後が知りたくて、このエッセー集を手に取った。

それぞれが多忙を極めた家族だった。和子さんは91歳の母と初めて海外旅行に出て「やっと親子になれた」と書いている。晩年は美容院のシャンプーから仕上げまで一人でこなし、97歳まで現役だった。

骨折を繰り返し、寝たきりにはなったが頭はしっかりし、冗談など言っていたらしい。早世した作家の前夫、エイスケさんのことをふいに思い出したり、心は老いない終末だった。平成27年、107歳で天寿を全うする。作家の兄、淳之介さんと作家で詩人の妹、理恵さんはすでに亡く、一人になった和子さんは改めて家族を思い起こし、この本をまとめた。理恵さんとの最後の日々は心に迫るものがある。

そして自身の記憶をたどる。小児喘息に苦しんだ少女時代、やがて演劇を志して劇団民藝の門をくぐった。最初の舞台から女優への道を歩み始め、一人芝居の成功、これが最後と決めた舞台まで、読んでいくと女優とは甘くないのだということがよくわかる。同時に演技にかける息づかいが伝わってくる。文章に添えられた小粋な自作の俳句も味わい深い。

書きながらかつて知人が『あぐり』のファンだったことも思い出した。演技について詳しくはわからないが、和子さんが一つ一つの作品に魂を吹き込んできたことがよくわかる。人生の喜びや希望がじわっと見えてくる一冊だった。

兵庫県尼崎市 渡辺陽子(45)

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