「おはようございます。いつもの、お願いします」
単身赴任の私は、毎朝、職場にある喫茶室でスタートする。ここのタマゴサンドがうまい。口にする度に、手のひらにタマゴがあふれる。ボリューム満点のタマゴサンドは、単身赴任の私のひとつの楽しみだ。
「あらっ、久しぶり。お元気そうで。何年ぶりかしら。今度はどこの部署? 何年くらいいるの?」と15年ぶりのママさんの声が、私を立て続けに包み込む。
本当に私を覚えてくれているのかなぁ…?
「いけないわ、話し込んじゃって。オレンジジュースとタマゴサンドでしたね」とママさんの声が続いた。私のことを覚えてくれていた。
コロナ禍となり、出勤日が制限されたこのご時世では、この喫茶室の売り上げも激減しているはずだ。アルバイトもいなくなっている。それでも私たちのために、朝・昼・晩と毎日、喫茶室を開けてくれた。
「あら、また、手のひらいっぱいのタマゴにしている」とママさんはいたずらな笑顔を見せる。在宅勤務明けの私を、その孤独感から解放するには十分なほほ笑みだ。
まもなく米寿を迎えるお茶目なママさんとも、異動でお別れとなる。
最後のモーニングセットだ。
「いつもの、お願いします」。お気に入りのサンドイッチからは、いつも以上にタマゴがあふれ出た。振り向くと、ママさんの満面の笑顔があふれていた。
「ママさん、ありがとう。いつまでもお元気で!」。手のひらのタマゴは、塩味であふれていた。
安藤充 51 埼玉県和光市






























