• 日経平均26491.97320.72
  • ドル円135.17135.27

震災の記憶テーマに 文豪から力 芥川賞の石沢麻依さん

東日本大震災の行方不明者をモチーフにしたデビュー作で第165回芥川賞を射止めた石沢麻依さん(41)。14日夜、留学先のドイツからのオンライン会見で「最初でこんなに大きい賞をいただき、新人として破格の恵まれた状況」と感謝を示す一方、「同時に試されている部分もあると思う。うれしいというより、とても恐ろしいという気持ちが強い」と正直な心情も吐露した。

「貝に続く場所にて」(群像六月号)で第165回芥川賞に選ばれたドイツ在住の石沢麻依さんは、リモート会見に応じた=東京都千代田区(日本文学振興会提供)
「貝に続く場所にて」(群像六月号)で第165回芥川賞に選ばれたドイツ在住の石沢麻依さんは、リモート会見に応じた=東京都千代田区(日本文学振興会提供)

執筆のきっかけはコロナ禍だった。ドイツで昨年3月、ロックダウン(都市封鎖)に直面。人通り、車の往来が絶えた光景に「既視感を覚え、震災の記憶へと続いていきました」。

震災当時、仙台市で被災したが、津波や原子力発電所とは関わらない場所にいたという〝罪悪感〟を抱き続けてきたという。毎年3月11日の追悼をはじめ、被災地、被災者への距離の取り方に違和感もあった。

一方、「第二次大戦の記憶をいかにつないでいくか」が積極的に議論されるドイツの生活で「記憶と向き合うとは何か」を意識するようになり、「あの日をカタルシス(精神浄化)で終わらせたくない。過去を美化した物語にしたり、感情的に消費したりするのでなく、問い続けて記憶していくために私も何か声を出せないかと書きました」。

小説執筆は高校時代に始めたが、いずれも未完成のまま20代半ばで中断。ドイツで「自分の言葉のスタイル」を見つめ直すうち、「そろそろ書きたい」と2019年夏に再開して3作目。震災の記憶との距離感をテーマに、専攻の美術や、舞台となるゲッティンゲンの歴史などの教養と言葉があふれる作品に。

ゲッティンゲンに縁があり、「天災と国防」も著した寺田寅彦、関東大震災の12年後に震災で亡くした教え子を悼む短編「長春香」を書いた内田百閒、そして夏目漱石ら好きな文豪たちからも力をもらった。

事前取材で、小説執筆を再開した当時を振り返り、「自分のまわりに色彩が戻ったという感覚だった。小説執筆はどうしても切り離せない自分の一部だと思った」といい、冒頭で不安をのぞかせた会見でも後半には、こう語った。

「先人の作家たちの声を引き継ぎ、私の中で膨らませて、さらに自分の声を作り上げていきたい」

(三保谷浩輝)

芥川賞は石沢、李両氏 直木賞は佐藤、澤田両氏


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)